【玉ノ井親方 視点】
朝乃山は大関時代の力強さが戻りつつある
琴ノ若（左）の攻めを土俵際で耐える朝乃山（撮影・藤山 由理）
◇大相撲秋場所２日目
○朝乃山
（上手投げ）
琴ノ若●
2023年９月１１日
両国国技館
早くも2日目に今場所の行方を占うような注目の一番が組まれた。
新関脇の琴ノ若と大関返り咲きを目指す朝乃山との取組だ。
琴ノ若は初日に正代に快勝。一方の朝乃山も若元春戦で相手十分の左四つに組まれながらも、力強く寄り切って白星スタートを切っている。
両者ともに、最高の滑り出しを見せただけに、どんな取組になるか興味を持って見た。
結果は上り調子の若手の勢いを復調気配の元大関が受けて立つ形になり、攻防のある見応え十分の一番になった。
立ち合いは琴ノ若が両手をクロスさせながらもろ差し狙いにいった。当たってすぐにいなすと、右喉輪で押し込み右を差して土俵際でまで迫る。ここまでは琴ノ若の相撲だった。
だが、朝乃山は簡単に土俵を割らなかった。右に回り込みながら左で上手をつかむと重心を低くして反撃。今度は逆に琴ノ若を土俵際まで押し返した。前に出る時に相手にもろ差しを許したものの、琴ノ若の態勢が棒立ち気味だったため、左から上手投げを見舞って土俵に転がした。
朝乃山は今場所が幕内復帰3場所目。馬力のある琴ノ若の出足に、土俵際まで下がる場面はあったが、下半身の動きは乱れていなかった。態勢も崩れず、しっかりと押し返すことができていた。幕内の相撲にも慣れ、徐々に大関時代の力強さが戻ってきている感じだ。
ただ、敗れた琴ノ若も着実に力をつけている。朝乃山を最初に押し込んだ時に左でまわしを引くことができていれば、展開も変わっていただろう。この日は朝乃山に流れがあったが、2人の力は五分と見ていい。
（元大関・栃東）
