ノ ブ 「これはいわくつきのシンフォニーで、複雑な経緯をたどってきた曲
なんだ。1923年、オーストリアのランバッハにあるベネディクト派
修道院で2種の交響曲の楽譜が発見された。そこには、一方の譜面
にウォルフガングの名が、一方にはレオポルトの名が記されていた
というわけだ。親子が演奏旅行の帰りに立ち寄って寄贈したらしい。
ウォルフガングの名の譜面は、ウィルヘルム・フィッシャーの
鑑定によりモーツァルトの真作と判断され、K 45a があたえられ、
通称「ランバッハ」として知られるようになったんだ。」
イヨカン「それって、新旧がある曲なんでしょ?」
ノ ブ 「そのとおり!フィッシャーの鑑定後、ドイツのアンナ・アマーリエ・
アーベルという人が大胆な説をとなえたんだ。楽譜の表記は逆で
あり、父の作品とされるほうがモーツァルトのもので、K 45a は
この時期の作品としては物足らなく、筆致も違うということで、
こちらがレオポルト作ではないかというわけだ!
この説は非常に支持を集めることとなり、K 45a を「旧ランバッハ」
父の作品とされていたほう(同じト長調)を「新ランバッハ」と呼ぶ
ようになり、定着するかにみえた....。」
イヨカン「また、問題が出たの?」
ノ ブ 「1982年になって、1980年にミュンヘンで発見された K 45a のパート
譜が公表されたんだ。これはレオポルトによる記載で、1766年、
デン・ハーグでウォルフガング作曲とあり、修道院の譜面は改訂
部分を含んでいたことと、寄贈されたと思われる時期よりかなり前に
作曲されていたことが判明し、真作であることもほぼ確実になった
というわけだ。」
イヨカン「父の作品と間違えられたくらいだから、もうひとつの作品よね!」
ノ ブ 「そう言われてしまう父もかわいそうだけれど、言わせてしまう10歳も
すごい!ってことだね。3楽章制ながら、ユニークな部分も多く、
偽作問題も解決したところで、純粋に鑑賞したいところだね。」