転勤や異動、転居などで顔なじみの人との
別離を経験される方も多いことでしょう。
私には、別れに遭遇するたびに
思い浮かぶ曲があります。
佐野元春「グッドバイからはじめよう」
ハーブが奏でる静かな音色にはじまり
全編にわたり、激することも、涙することもなく
淡々とした旋律で、別れの情景を歌い上げます。
ちょうど 波のように さよならが来ました
言葉はもう 何もいらない ただ見送るだけ
出だしのフレーズですが、別れに対して
全く気負いがありません。
寄せては返す波の如く、ごく自然に
避けられない、むしろ避けてはいけないもの。
別れに際してここまで言い切るって
とても新鮮な思いがしました。
遠く離れる者 ここに残る者
僕が決めてもかまわないなら 何も言わないけど
どうしてあなたはそんなに 手を降るのだろう
僕の手はポケットの中なのに
過剰な言葉も、大仰なアクションも必要ない。
永遠の愛も、尽きせぬ慈しみも、
いつかは枯れ果て、終焉を迎える。
どれだけ愛し合っていたとしても
一緒に棺桶に入るわけにはいきません。
仏教用語の「会者定離」(出会った者は必ず別れる)を
思い起こさせます。
ただ、ここまで突き放されると
世の儚さ、無情を感じざるを得ません。
私を含めごく普通の、弱い人間にとって
ここまで達観できないような気がします。
でも、佐野元春は最後にこう語りかけてくれます。
ちょうど波のように さよならが来ました
あなたはよく こう言っていた
終わりは はじまり
終わりは はじまり
最後のフレーズで、救われる気がします。
別れは終わりであるとともに
はじまりでもあるのだと。
私はこの曲に出会って、これまで別れに
抱いていたイメージをくつがえされました。
親しい人との別れはつらく、悲しい。
別離をテーマにした歌はそれこそ枚挙にいとまが
ありませんが、大半はその身を切られるような苦しみに
あえぎ、のたうち、絶叫するといったものでした。
当然ながら、まず「別れはイヤだ。できれば避けたい」
という思いがあるわけです。
その感情は十分に理解しつつも
別れを嘆くだけではなく、むしろ肯定的に
捉えて、そこに意味を見出そう。
そして、新たな出会いに希望をつなごう。
そんなメッセージが、この曲には
込められているように思います。
諦念というか、相手の将来まで
思いを馳せることができる
器の大きさも必要なのかもしれません。
そんなことまで考えさせられます。
別れと出会い。
考えてみれば、人間の生涯って
その繰り返しですね。
ただ、また味わうことになる別れに際して
どうにもならない感情に襲われた時には
また、この曲が思い浮かぶのでしょう。
