お彼岸:春分の日・秋分の日をはさんだ前後3日間、合計7日間をそれぞれ『お彼岸』といいますね

私の実家はご先祖様のお墓が遠かったこともあり、お彼岸にお墓参りの習慣がなく、お彼岸ってどんなものか思いを馳せたこともなく大人になるまで過ごしてきました。


 調べてみたら、お彼岸の言葉の由来はインドサンスクリット語の『パーラミター』=お経の『はんにゃーはーらーみーたー』の『波羅蜜多』の部分

この『波羅蜜多』の『波羅蜜』とは俗世であるこちらの世界(此岸)から、仏陀の悟りの世界(彼岸)に至ること、仏になるための修行のこと。

それが満ちる=『多』で『波羅蜜多』悟りの世界に行ける。波羅蜜多=彼岸に到達するという風に訳されているようです。


春分・秋分は陰と陽が同じになる時=昼と夜が同じ=彼岸と此岸が最も近づく日と考え、春分・秋分の前後を『お彼岸』と呼ぶようになったんでしょうね。

彼岸のご先祖様に手を合わせ、春は豊作を願い、秋は収穫を感謝するという日、なんだかとても心温まる祝日のように感じてきます。


 で、お彼岸と言えば、春はぼた餅・秋はおはぎ。


どちらも同じモノなんですけどね(秋は粒あん・春はこしあんが主流)。小豆の赤で魔除けの意味合いや、赤という縁起の良さから頻出食材のような気がします。

薬膳的には、小豆には『利水』といって余計な水を出す働きがあります。この時期、花粉症などでダラダラと鼻水が出てしまうのは体に余計な水が滞っていたサインかもしれませんので、小豆などの豆類で要らんもんをしっかり尿として出すのを心掛けてください。

日本は島国ですから基本的に湿気が多く、胃腸が弱い人が多い傾向があるため体の中の湿気(良くない水分や余計な水分)が溜まりやすい。利水して体の中を除湿してあげましょう。


 そして、和菓子についている爪楊枝みたいな木のアレ。『黒文字』といいます。 クスノキ科のクロモジという木の枝で出来ていて(名前が素材そのまんまですね) が使われているのですが、樹皮にある黒い斑点が文字のように見えることから黒文字と呼ばれているとのこと。 

枝や幹を乾燥させた生薬としては烏樟(うしょう)と呼ばれています。(烏=カラスは黒い物を表すときに使われること多し) 効能としては、高ぶった神経を鎮める、痰を切る、咳を鎮める、気管支の粘膜の炎症を抑える・香りの働きで胃腸の調子を上げる、といったものがあります。

 春はイライラしたり気持ちが高ぶったりしやすい精神的にもハードな時期です。また、花粉症の人にとっては鼻水やのどの痛み、目のかゆみなど体の上部に炎症が現れやすく…辛いですよね。 そして私の周りではストレスから胃もたれや食欲不振になっているとの声も聞こえてきます。あら?クロモジの効能とピッタリ合うじゃない!と気が付きました。


 春の忙しい時だからこそ、ちょっとココロとカラダを落ち着かせるためにも

《ぼた餅を黒文字を使っていただく》 というのはいかがでしょうか。

お薬のように劇的な効果はないと思いますし、ささやかなことかもしれませんが、古来からの習わしを生活の一コマにいれるのも養生の一つだと思って...。