あらすじは以下よりご覧ください。
【2023年本屋大賞第2位】
【第25回大藪春彦賞受賞】
【第6回未来屋小説大賞第1位】
【第44回吉川英治文学新人賞ノミネート】
 

作品はフィクションですが、過去の出来事、

音楽教室を運営する事業者・団体が日本音楽著作権協会(JASRAC)を相手取り、レッスン時に講師や生徒が楽曲を演奏する際の著作権料を徴収する権利がないことを求めたもが題材になっています。教師による演奏のみが演奏権の対象となり、音楽教室側に音楽著作権使用料の支払い義務が生じるが、生徒の演奏については生じないとする判決が確定しております。その際の裁判で、日本音楽著作権協会は、音楽教室に潜入調査させていた職員に調査内容を証言させています。

表紙はとてもきれいで、本の内容を反映したイラストだと思います。

 

以下ネタバレを含みます

全体に暗い雰囲気のように感じました。

主人公は、何事にも冷めた態度で、達観しているようなところがあります。けれど、心の奥底のトラウマを抱え苦しんでいる。自分の暗い部分をうまくごまかし、隠しながら社会生活を送っている人は多いのではないかと思います。

心理描写がとても共感を誘います。

『年齢が上がっていくにつれて、あらゆる齟齬は大きくなった。周囲がするりと乗っていくボートに、自分だけは乗れない気がした』

あぁ、私もだ。と思いました。

抱えるほどのトラウマはありませんが、主人公が感じる気持ちに、

あぁ、そう感じるな。と、

自分の中の気持ちが言語化されたような感じにもなりました。

教室の先生に正体がバレる瞬間のシーンはとても胸が痛かったです。大人になってから、誰かと想いをぶつけ合うことってまずないですから、その後の展開は、すこし羨ましいような、心が和らぐような気持になりました。