広重展
先週の金曜日、仕事の後に広重展へ行ってきました。
『東海道五十三次』がメインに展示されていました。
私は、浮世絵では女性画が一番好きなんですが
コレが描かれた時代に、庶民の間で流行っていた旅行の名所や
旅行スタイルなどが垣間見れて面白かったです。
『五十三次』は、北斎の『富岳三十六景』の成功を受けて描かれた作品だと紹介されていました。
『三十六景』ほど成功はしなかったものの、当時の旅行ブームでこの名所絵をお土産として購入していく旅人が後を絶たなかったそうです。
今では当たり前となった写真代わりと言ったところでしょうか。
また、十返舎 一九の小説『東海道中膝栗毛』も同時代に描かれ
その本を読んだ人が、弥次喜多コンビのように旅に出て、
彼らが訪れた場所の名所絵をお土産に故郷のみんなに面白おかしく話して聞かせたようです。
このようにあらゆる方向から『町民の旅行』というものが盛り立てられていたことがうかがえます。
北斎、広重、一九が描いた作品は、
時を経て、今では国の重要文化財や世界でも有名な芸術となっているけれど、
これらが描かれた当時は商業目的の単なる商品でしかなかったことが興味をそそります。
作家の技量、繊細さ、作品における情熱もその要因ではあるけれど
その作家達をこのようにつき動かしたのが民衆の力なんですね。
その時代時代の人々の暮らし、流行を受けて紡ぎだされる作品。
そして、こういうエンターテイメントを作り出せた世の中の安定した平和。
世の中の心のゆとりのようなものを感じます。
こうしていろんな奇跡が重なって生み出されたんだと思うと、
私は、これらの作品を通してその時代、そこに生きた人々に感嘆しているんだと気づきます。
私が浮世絵を好きな理由はここにあるのかも知れません。
作品をとおして刹那的に過去にタイムスリップ。
過去の人々に触れることで元気や勇気を貰ってる気がします。
現代は、江戸時代に似ていると思います。
戦後、世界的観点から見ても豊かになり、平和を保っている日本。
無数に出回っている広告や、雑誌、本、映画、音楽・・・。
何百年後かに、この中からどの作品がどんな風に評価を受けているんでしょうか?
同じものでも、時代背景、人々の捉え方によって、付加価値が変わってきますから、
そういう意味では、私達をとりまくすべてのものがアートと言えるのかも知れませんね。
