L'anglais-ラングレ
L'anglais-ラングレ
フランス語の先輩であるムッシューSが飼っているコーギーの名前です。
コーギーはイギリス原産の犬。
それにちなんで、イギリスを意味するフランス語“L'anglais”と命名したのだそうです。とっても素敵ですよね。教師であったムッシューSらしいネーミングだと思います。
N美さんの話によると、ラングレはネコにも噛まれてしまうほど弱々しいワンコ(笑)
そのためか、動物病院に行っても先生を威嚇してなかなか診察させないんだとか。高齢なので心配です。
そんなラングレ。
実は、1年ほど前から体に異常が出ていました。
肝臓に大きな癌があるというのです。
この冬、大手術の末5cm大の癌を取り去ったものの、
すべては取り除けませんでした。
残された時間を、ムッシューSはなんとか楽に過ごさせてあげようと頑張ってました。
時折、“クワイドネフ”でラングレの状況を話してくれましたが、
「みんなが暗くなっちゃうから、あんまり話さないようにするねー」って
サラッと明るく話してくれてたっけ。
ムッシューSの昨日の“クワイドネフ”は、
恐らく最後になろうラングレのお話でした。
4月30日。
ラングレは天に召されていったのです。
その日の朝、ラングレは食事もできないほど衰弱していたそうです。
そんなラングレの傍でいつものように盆栽の手入れをしていたムッシューS。
すると、突然ラングレが
「ワンっ!ワンっ!」
と2回ほど啼いたのだそうです。
ムッシューSは、水が飲みたいのだろうと思い持っていってあげました。
それをペロペロと少し舐めたラングレ。
これが、2人の最後の時間となりました。
その後、外で用事があったムッシューSは外出。
帰ってきてみると、奥さんがワンワンと泣いていました。
「どうしたんだ!?」
とたずねると、
「ラングレが…、ラングレがー!」
慌ててラングレのもとに行ってみると、既に息絶えたラングレがそこにいました。
御年14歳。
最後の1年は、ラングレにとって苦しみとの戦いでしかなかったでしょう。
霊園で火葬後、自宅に持ち帰ったムッシューSは庭の片隅にラングレを埋葬してあげました。
これからも、ラングレはムッシューS夫妻と一緒なのです。
私は、ラングレに会ったことがありません。
けれど、日ごろのムッシューSやN美さんの話のおかげでとても親しみを抱いていました。
ラングレにとって苦しかった1年を知ることができて、よかったと思います。
ラングレが頑張って生きたことを、私は絶対、絶対忘れません。
最後に2回啼いたラングレ。
ありがとう。そして、さようなら。
そんなことを言っていたのかもしれませんね。
ラングレの安らかな眠りをお祈りいたします。