My Everything epi.33 | φ ~ぴろりおのブログ~

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イタズラなKiss&惡作劇之吻の二次小説を書いています。楽しんでいただけると、うれしいです♪ 

父さんが作ってくれたお昼を一緒に食べた。

お茶を飲みながらのんびりしていたけど、もうしばらくしたら慎さんたちもやってくる。

挨拶してから帰るか、邪魔にならないよう早めに帰るか、少し迷う。

そんなあたしに気づいたのか、父さんも時計を気にする素振りを見せた。

 

「時間大丈夫か?夕飯の支度の手伝いもあるだろ。」

「うん。そろそろ、帰るね。」

 

『ただいま』って帰って来たから、帰るって言葉が少しだけ喉に引っ掛かる。

この間は入江くんと一緒だったし、入江くんが父さんに帰って来てほしいって言ってくれた。

あたしも説得するって言ったのに、時間はあったのに、うまく切り出せなくてまだ何も話せていなかった。

 

 

「父さん、入江くんがこの間言ったこと、考えてみてね。」

「直樹君が...ああ。」

「はじめての里帰り、すごく楽しかった。ありがとう。」

「こっちこそ。」

 

「一緒に暮らしてたら、毎日里帰りできるよ。」

「...それは、里帰りって言わねーだろ。」

「だって、一緒に暮らせたら、あたしもうれしい。考えてみてくれないかなぁ。」

「...わかった。」

 

説得なんて、全然できなかった。

難しい顔になってしまった父さん。

それ以上、何も言えなくて、思い出したように違う話をした。

 

 

「気を付けてな。皆さんによろしく。」

「うん。父さんも身体には気をつけてね。」

「おう。心配いらねーよ。何かあったらすぐに言うんだぞ。」

「うん。ありがとう。じゃあ、またね。」

 

笑顔で手を振った。

次はいつ会えるかな。

いつか、一日でも早く、一緒に...

胸の中で、寂しさを願いに変えた。

 

 

 

 

「ただいま。帰りました。」

「琴子ちゃん、お帰りなさい。早かったわね。ゆっくりしてきてよかったのに。」

満面の笑顔で迎えてくれたお義母さん。

たった一日いなかっただけなのに、すごくうれしそうでなんだか少し恥ずかしい。

 

一泊だから荷物も少ないし、片付けはあっという間に終わった。

待ち構えていたお義母さんに聞かれるまま、父さんと行った浅草の話をした。

船から見た景色、キレイしか言葉が出なかった川沿いの桜、スリル満点の橋めぐり。

次々に浮かぶ出来事とずっとそばにあった笑顔...

 


父さんは何も言わなかったけど、ここに戻って来ないのはあたしのためだってわかってる。

一緒に暮らせたらうれしいとは言ったけど、父さんがいなくて寂しいとは言えなかった。

 

あたしには入江くんがいる。

ここには、お義母さんも、お義父さんも、裕樹くんもいる。

一人きりで寂しいのは父さんだ。

 

病気だって心配だ。

いまは元気でも森脇のおじさんみたいなこともある。

もし一人の時に倒れたりしたら...

 

 

心配でたまらないから一緒に暮らしたいと言えばよかったのかな。

でも、あたしのためと思ってくれている父さんの気持ちも大事にしたい。

入江くんが言ってくれたように、もう一度家族になるにはどうしたらいいんだろう。

 

ついリビングのドアに目が行く。

昨日見た笑顔が、ここで暮らしていた父さんの姿に変わる。

いるはずがないってわかってるのに...

父さんがいた部屋に探しに行きたくなった。

 

~To be continued~