ジュラルディン・ブルックス

森嶋マリ 訳


1996年サラエボ ボスニア・ヘルツェゴビナ紛争直後の崩壊した街にオーストラリアから赴いた古書鑑定家ハンナ・ヒースは 紛争中にイスラム教徒の学芸員が命がけで守ったという ユダヤ教が絵画的表現を禁じていた時代に作られた美しい細密画で彩られた古書の保存修復を依頼される


古書に付着の 昆虫の羽根 ワインの染み 塩の結晶 白い毛 を採取し 装丁にかつて留められていた金属の跡も見つけ それぞれの鑑定検証に乗り出すことはその足跡をたどることになる

 


過越の祭りの席セデルで使われる〜祭りの式次第や「出エジプト記」が記されている 500年前のユダヤ教の写本サラエボ・ハガダーの長い旅へと誘われる


第二次大戦下1940年サラエボでのパルチザンとして戦ったユダヤ人少女ローラと国立博物館の管理責任者とその妻ステラ〜イスラム教徒の学芸員セリフ・カマルとの出会い 


1894年ウィーンではユダヤ人医師と患者 性病にに罹った装丁師ミトルの成り行き

1609年のヴェネチアでのカトリックの司祭ジョバンニ・ドメニコ・ヴィストリニとユダヤ教のラビであるユダ・アリアのふたりの儚い友情や羨望など 

1492年スペイン タラゴナ ユダヤ教の記述師と妻その息子たちの異端審問の悲劇のなか 娘ルティと製本師ミハ そしてハガダーは⁈

1480年セビリアの黒人奴隷ザーラと総督の美しい妃ヌラとのいきさつ


と微細な手がかりを分析しつつ過去のハガダーを探索に サラエボ国立博物館の主任学芸員オズレン・カラマン ハンナが師と仰ぐ古書鑑定の第一人者ヴェルナー・ハインリヒ 著名な外科医でありサラの仕事を快く思っていないサラの母親〜母娘の確執あり たちが彩りながら展開 ユダヤ教 キリスト教 イスラム教と 根底に宗教対立


出ました!ラピスラズリ 虫の緋色ワームスカーレット=ヴァーミリオン♪

ウインナ・ワルツとザッハトルテの無いウィーンとか 楽器無しで出歩くのはピアニストかハープ奏者かスパイか⁈ 

とか漫画チャールズ・シュルツの“口角が上がってるように見えてさがってる笑み”という発見⁈^ ^

に加え

ヴェネチアでは仮面でカーニバルでは 話題の誰かさんならずとも⁈の賭博の誘惑‼️

エッジが効いてる⭐️


アルハンブラ宮殿の景色も蘇りつつ♪ハムステッドの木造りの家を囲むバラ🎶と背景描写細やかに さらに色っぽい話も⁈ありました^ ^ネトフリ的ノリ⁈



冒頭の

“書物が焼かれるところでは最後には人も焼かれるーハインリッヒ・ハイネ”

に焚書の哀しみあれど

ハガダーのみならず国や人を超えての本の魅力に酔いました📚今年のベストに残る一冊でした⭐️


そして未だ続く中東の紛争の根の深さに思い至りました