「ゲゲゲの女房」千秋楽 | 宮菜穂子オフィシャルブログ「菜時記」Powered by Ameba

「ゲゲゲの女房」千秋楽

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岐阜は長良川ぞいにある長良川国際会議場。
9月末の境港から始まった「ゲゲゲの女房」公演の
最終地です。

安藤忠雄さんの建築による大きなホール。
モダンなのに温かいこの劇場、
二階席までうまった客席。

いつも通り始まりました。
そして涙で終わりました。

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役者には、カンパニーにはまた会える。
「ゲゲゲの女房」の中で生きていた人たちには、
もう会えない。
舞台上から一緒に見た光景、
舞台上で過ごした時間が泡のように消えてゆくことに、
とてつもないさみしさとありがたさを覚えたのでした。

水木先生、布子さん、紙芝居屋さん、
漫画家さん、妖怪君たち。
その彼らと過ごした時間がとっても生き生きと、
息づいていたのからなのかしら。

終幕、
妖怪が水木夫妻にこういいます。
「ずっとずっとありがとうございます。
 信じてくれてありがとうございます。
 これからもずっとよろしくお願いします。」

この台詞どおりの気持ちです。

そしてお父ちゃんのこの言葉も頭をよぎります。
「目に見えたら信じるも信じないもない
 目に見えんから信じられる、
 目に見えんから不思議なんです」

コトバで言えんから不思議なんです。
コトバで言えんなにかがあって、
それを信じて、手をつなぎ合ったからこその
作品であったような気がします。

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布子さんの回想録という形をとったこの物語。
水木先生の奥様が人生を振り返って、
記憶を刺した人々を、
記憶の断片を、つなぎ、
なんだかわからないけれど不思議なことは妖怪がつなぎ、
記憶を紡いでいく物語。

じっさい私たちのあるく道もそんなん。
記憶を刺した出来事、人、目に見えない気持ちや関係、
そんなものを紡いで、時を紡ぐ。
人と人とが、織りあって、絡んで、
一枚の布がおられてゆく。

その大きさ長さはそれぞれ。
お蚕という名の、
目に見えない、コトバで言えない網の目が、
糸を紡ぎ、布をつむぎ、模様をつくる。

この作品は、自分でも気づかないうちに、
ゆるぎない一本の糸を作ってくれたような気がします。
お稽古が始まったときは、
予想もしなかったのに。

この舞台づくりに参加させてもらえた
機会に、カンパニーに、
観にいらしてくださったお客様に
感謝をこめて。

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