ジェーン・エア | 宮菜穂子オフィシャルブログ「菜時記」Powered by Ameba

ジェーン・エア

『ジェーン・エア』@日生劇場

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歴史的事件、と。
私のなかでは。
劇場に「自然」が生まれていました。
これって凄いこと。
夢みたいなこと。
なかなかない体感。

人工的で虚構溢れた場所であるはずの劇場に、
太陽も森も風も、生きた血肉、体温がありました。

音楽の中に芝居がある。
音楽の海の中に登場人物が泳ぎまわる。
身体を通り抜け、ときに貫き刺しやわらかに触り包むような音楽。
そして息づく人物。
これは新しい演劇のジャンルなのでは。

シャーロット・ブロンテのジェーン・エア。
あの物語の如くのジェーン・エアにブロンテ自身の生き様も見えかくれ。
あの作品が生まれた由縁がみえるよう。

小学生の時に初めて読んだジェーン・エア。
火事と幽霊と神様のお話という印象でした。
今、音楽と歌の加わった新たな形を見て思うのは…
見えているものと見えてないもの。
持っているものと持っていないもの。

教育も容姿も持ち物も夢もなにもない女の子が、
祈りと許しの心に基づいた判断力をもってして、人と出会い、得るべきものを得てゆく。

様々な愛のかたち
19世紀に生きた一人の女性に纏わる人々が、
ありのままの生、成、清声、聖、醒を
彼女を通して教えてくれる。

静かな海の底が
大地の変動で揺れ波立つような、
月のまわりに、ユラユラと金色の光が揺れるような、
血管が静かに脈打つような、
自然の波動。
それが作品の根底に流れていた気がします。

素敵なカンパニー、
さすがジョン・ケアードのカンパニー。
心からの感謝と尊敬と拍手を。