「長年、私の本と絵を子どもたちと分かち合ってくれていること、

そして親から子へ、希望とともに絵本を受け継いでくれていることに

感謝の気持ちを捧げます。ありがとう」


ちょうど1週間前(5月23日)に他界した

アメリカの絵本作家、エリック・カールさん。

彼が4年前に、日本の読者へ寄せた手紙の一文です。

5月28日、読売新聞・編集手帳は、

そんなエリック・カールさんについて記しています。

〈かわいい大きな目をした青虫がリンゴやケーキをどんどん食べて育っていく。

サナギになり、やがては美しいチョウヘーー

エリック・カールさんの絵本『はらぺこあおむし』である

世界的なロングセラーとなるこの本は1969年、

じつは日本で初版本が印刷された。

子どもたちが触れて喜ぶようにと、

絵のところどころに穴を開ける凝った仕掛けに

当時の米国の出版社は尻込みした

困ったすえに印刷技術の高い日本の出版社に企画を持ち込み、

世に出たという経緯がある。〉


ここまで読むと、1969年前後の日本の印刷技術は

世界有数であったことがわかります。

やがて「色彩の魔術師」と言われたカールさんは、

そんな日本の技術に魅了されたのでしょう。

飛行機が苦手だったにも関わらず、

「日本のすべてが好き」と語り、何度も来日したと・・・。

〈発表した絵本は40作以上にのぼり、39か国語に翻訳され、

出版部数は5500万部を超えている〉(Wikipediaより)
 

 

そんなエリック・カールさんは

1929年6月25日生まれ 

 K153  赤い空歩く人  黄色い種  音10です。

 

絵本作家に向いていると感じる紋章の一つが

「赤い空歩く人」。

 

「成長を手助けする」エネルギーは、

子どもの成長をもサポートするからです。

日本語版の出版社である偕成社(かいせいしゃ)の今村正樹社長は

カールさんとは家族ぐるみの付き合いを続けてきたようです。

 

そんな今村社長は、カールさんについて

「周囲のものに、強い関心を持っていらっしゃる方だった」と。

 

日本に来た時も、車の窓から見える風景に

「どうしてあの街路樹は・・・」

「あの電柱は・・・」と、

様々なことを尋ねていたカールさんの姿が

印象に残っているといいます。


どんなに歳を重ねたとしても好奇心に溢れ、

「子ども心」をまったく失っていないことが分かります。

 

絵本という、とくに幼児を対象に作品づくりをする場合、

幼児の最大の特徴である「好奇心」が

色濃く残っていることが大事ではないでしょうか。

 

その点からしてもカールさんは

抜群な要素をお持ちだったことになります。


また「赤い空歩く人」は「空間」をも意味しますが、

さまざまな色彩を通じ、

子どもの前に広がる空間を豊かにしています。

「純粋な子ども心」、またその象徴ともいえる

「好奇心」をもつことは、

誰にとってもいつまでも元気でいる最大の秘訣です。


こよなく日本を愛してくれたエリック・カールさんの

ご冥福を心からお祈りいたします。