【五味、五色、五法】

この日本料理の根幹となる考え方

答えられるでしょうか？

今回はこの料理の基本について、

そしてなぜ五味、五色、五法が生まれたのかを説明していきます。

日本人なら、少しでも日本料理に携わるなら、原点とも言えることで、知っておいてもらいたい内容です。

後半は少し難しくなるかもしれませんが、なるべくわかりやすく説明しますので、ぜひ最後まで読んでみて下さい。

五味

甘味、塩味、酸味、苦味、辛味を指します。

甘い、しょっぱい、酸っぱい、苦い、辛い、どれもイメージしやすいと思います。

これが基本味と呼ばれる五味です。

さらにここに、

出汁に多く含まれるうま味も含めて６つの味のバランスが日本料理の基本になります。

五色

白、黒、黄、赤、青（緑）

これは料理そのものだけではなく、器の色、あしらい、花なども含めて

この五色を活かして演出していくのです。

見た目が華やかになるのはもちろんですが、栄養のバランス的にも優れたものになります。

料理は味の美味しさもさることながら、視覚的な美しさで食の楽しみや、美味しさを増幅させるのです。

五法

切る（生食）、煮る、焼く、揚げる、蒸す

の基本の調理法を指します。

一つ一つ見ていきましょう。

切る

世界の中でも、切るという行為が重要視されるのが日本料理だと思います。

刺身をはじめ、生で食べるものが多いのです。

食材で季節感や華やかさを表現するための飾り切り、

火の入りを均一にする

見た目が美しい

など切るという技術が日本料理にはあります。

煮る

食材を出汁、調味料と共に加熱する調理法です。

一言で煮ると言っても、その方法は様々です。

たっぷりの地で泳がせるように、調味料を分けて順に加えて煮る。

地を合わせておいてサッと煮る。

揚げたもの、焼いたものを、煮る。

調味料を煮詰めたものに食材を入れ、絡めるように煮る

など

その食材を活かす方法で煮るのが日本料理です。

焼く

素材を加熱するというシンプルでありながら、もっとも古くからある調理法です。

焼くと言っても

炭火焼き、フライパンやサラマンダーなどガスの焼台、オーブン焼き、など様々。

串を打ったり、網にのせたりということもある。

火加減、火入れ加減によって大きく変わるため、繊細な技術が要求されます。

焼くことで水分や食材のクセが適度に抜け、素材の持ち味が引き出されます。

メーラード反応により香ばしさが付与されることも魅力の一つです。

揚げる

高温に熱した多量の油で食材を加熱する揚げ物。

揚げると食材に含まれる水分は蒸発し、その空いた空間に油を吸収する。

高温・短時間で加熱するので旨味は逃げづらく、食材には、油の風味やコクが加わることになる。

カリっ、サクっとしたテクスチャーが生まれ、加熱による香ばしさも加わる。

下味や衣に変化をつけることで、多彩なバリエーションも可能です。

蒸す

水蒸気で満たされた蒸し器の中で、間接的に加熱する蒸し物。

他の調理法に比べ、食材の水分、旨味や栄養分が保たれ、しっとりとやわらかく仕上がります。

直接火を当てないため焦げないというメリットもある。

白身魚や野菜などクセが少なく淡泊な食材が適しています。

五味・五色・五法と語り継がれる理由

日本料理には五味・五色・五法という考えがあり、

コース料理、重詰め等には、これが備わっていることが理想とされます。

このルールはコース全体としてだけでなく、コースの中の一品である前菜・口取り内でも適用され、

その中にも、五味・五色・五法を組み込むのが理想と言われます。

メニューを決めるときには

この五味・五色・五法だけではなく

季節感、原価、コンセプトなどを踏まえて検討していくわけですが、

全てにおいて完璧なメニューを決めることは至難の業です。

五味・五色・五法に縛られ過ぎると、支離滅裂になる可能性が高いので、

あくまでも理想と捉えておくことが大切であると感じます。

料理は相手に「おいしい」と言って喜んでもらうことが一番であり

自己満足の規則重視の料理を出すことではないというのは忘れないで下さい。

そもそも

五味・五色・五法は、

中国の古代思想、陰陽五行説からきています。

ここから少し難しくなりますが、なるべくわかりやすく解説していきますね！

陰陽五行説とは

陰陽五行とは何かというと

陰陽説と五行説とが融合されたものです。

陰陽説とは

陰陽説は

世の万物を陰と陽の２つに置き換えて、

すべての物事は陰と陽の調和の上に成り立っているという思想のこと。

「陽」➡︎天、光、太陽、熱、動、春、夏、昼、男、奇数など

「陰」➡︎地、闇、月、冷、静、秋、冬、夜、女、偶数など

と考えます。

陰と陽、この相反する二つの力が補い合い、バランスを保つことで調和が取れてるという考え方です。

どちらか一方が過剰になると不調和をもたらすということです。

五行説とは

五行説は

全てのものは五つの元素(木・火・土・金・水)で成り立つとする理論です。

行には廻るという意味があります。

それぞれ５つの要素には属性があります。

木➡︎成長、柔軟性、拡張。春の象徴。

火➡︎ 熱、活力、変化。夏の象徴。

土➡︎安定、養分、変容。四季の変わり目や中央の象徴。

金➡︎硬さ、収束、冷却。秋の象徴。

水➡︎流れ、冷却、保存。冬の象徴。

この五行が調和を取るために

「相生」（そうしょう）と「相克」（そうこく）

という考えが説かれます。

相生とは、対象の要素を補い、助長する（助けあったりする）ことです。

強める影響を与える陽の関係です。

「相性がいい」と言ったりしますが、これは「相生」からきています。

相克は、対角のものを抑制し合う、暴走するのを押さえ止めたりすることです。

弱める影響を与える陰の関係です。

「木は火を生じ、火は土を生じ、土は金を生じ、金は水を生じ、水は木を生ず」という相生関係

「木は土を克し、土は水を克し、水は火を克し、火は金を克し、金は木を克す」

という相克関係

この相生と相克の関係によってバランスが保たれているということです。

これらの相生と相克の関係を通じて、陰陽五行説は自然界の変化や人間の体内のバランスを説明し、中国医学や風水、占星術など、多くの分野で応用されています。

中医学においては

「木・火・土・金・水」の5要素を起点として

臓器は「肝・心・脾・肺・腎」の五臓

味は「酸・苦・甘・辛・鹹（かん）」の五味

色は「青・赤・黄・白・黒」の五色

と分類されています。

そして、これらの要素と体の症状には関係があると考えられています。

心臓の病はのぼせなどで赤色、脾臓（ひぞう）の病は黄色、腎臓の病は顔が黒色になるなどと、経験的にそれぞれの関連性が示されています。

ここまで説明してきた陰陽説と五行説が合わさった

陰陽五行説から

日本料理の根幹となる考え方、五味・五色・五法はきています。

五味（辛・酸・苦・甘・鹹）

五色(黒・白・赤・黄・青)

五法(生・煮・焼・蒸・揚)

を全て入れることによって

五行相生・五行相克が生まれる。

つまり栄養のバランスや食材の相性、味覚の調和などがとれるということです。

奇数を尊ぶ日本料理

日本料理の風習や伝統では奇数を重んじることが多いです。

七五三や五節句なんかもそうです。

ちなみに五節句は…

一月七日（人日/七草の節供）

三月三日（上巳/桃の節供）

五月五日（端午/菖蒲の節供）

七月七日（七夕/七夕祭り）

九月九日（重陽/菊の節句）

また

日本料理は３種盛りや、５種盛りが多かったり、

メニュー数を構成するときも奇数を中心につくられる傾向がある。

これらは奇数を陽、偶数を陰とする陰陽説の影響を受けてのことです。

包丁にも陰と陽の考え方が影響しています。

和包丁は片刃なので、表と裏があり、刃の表が当たったものは陽、裏が当たったものは陰と捉えます。

大根の桂むきのように丸い素材を切ると、包丁の陽の面がむくものに接するので、むいた素材は陽になります。

逆に四角く切るときは素材が包丁の陰の面に接するので、素材も陰になります。

よって、造りで言えば、平造りは陽の刺身になり、へぎ造りにすると陰の刺身になります。

器組みや料理と器の組み合わせも陰陽があります。

丸や平らな器は「陽」

四角や深い器、お椀は「陰」とし、

陽の器には陰の料理を、陰の器には陽の料理を盛ることで、調和がとれるとされています。

たとえば、お椀自体は陰の素材なので、温かい汁物、陽を入れて調和させるということです。

丸い器には四角く盛り付けたり、四角い器には丸く盛り付けるとバランスが良くなるとも言われます。

器組みでも、四角いお膳には丸い器、丸いお膳には角張った器を組み合わせたりもします。

でもこれは、先ほど五味・五色・五法のところでも述べたとおり

あくまでも理想の話であり

縛られ過ぎると、支離滅裂になるってしまうことが多いです。

こういった考えを知った上で、ときには尊重し、ときには型を崩して、自らの料理を作り上げていけばいいと感じます。

少し難しい内容になったかもしれませんが、理解できたでしょうか。

料理に携わっている方は、絶対に知っておいた方がいい内容です。

皆さんの料理作りの参考になったなら幸甚です。

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