差し向かいの会食。
気になる、なんて程度では
済まないほど好いた人と
対面して食事をする。
なにを話せばよいか。
私は事前に五つ六つ話題を
用意しておくのが常で、
それをかつての友に話した
ら笑われた。
行き当たりばったり、
ぶっつけ本番で行けと言う。
そいつは音楽家であるから
出たとこ勝負は得意だろう
が自分は臨機応変と程遠い。
沈黙に耐えかねあらぬこと
を口走れば会食は台無しだ。
天候や目の前の料理について
話してもしばらく保たせられ
るが、しかしそれでは面白く
ない。
と、ここで気づいた。
私は話したい訳でなく、
その人の話が聞きたいので
あった。
だから話題を用意するなん
て無意味で、といって緊張
がゆるむことはなく動悸は
乱れるばかりです。
