八公: うるせェ、だったら、
てめェが言やァいいじゃねェか

女房: そんなこと、こっち
だって忘れちまったィ

八公: なんだとこの野郎ォ

大家: おォおォおォ、また
盛り上がっちゃいけねェよ。

おィおィ、八公、お前、落ち
着いて考えて言ってごらんよ。
訳がわからないてェことは
あるまい


八公: そりゃそうですよ。
訳がわからねェわけァないんだ。

だからわかろうと思って
何時もちょいと考ェえる。
その前ェにこの野郎が何か
グズグズ言うから話がもめて
くるンですよ。だから、だから
何ですよ、だから、・・・・・
はなァ、あっしが帰ェって
きて・・・帰ェってきたら
・・・・・この野郎、台所で
もって生の大根刻んでたんだ。


あー、それだ、こらァ飯は
まだだなと思ったから、湯へ
行くと言ったんだよ。

そしたら、こいつが、弁当箱
だしてくれって・・・・そらそう
だ、水につけてねェと洗いにくい
からね、それでもって、あっしが
弁当箱ォ出ししなにね・・・思い
出したィ、そーだ、“梅干飽きた
から沢庵にしてくれ”

・・・この一言いった・・・
そしたらこの野郎が親の敵に
出っくわしたような面しや
がって“なにィ!もういっぺん
言ってみろォー”

男のあっしが言ったんじゃァ
ねえんだ。この女がぬかし
やがったんだ。

てめえこそもいっぺん言って
みろと言いたくなるでしょゥ。
それでもって、この騒ぎですよ。

だからね、ま、喧嘩の元と
はっきり言やァ、・・・沢庵です


大家: ばかばかしいね、
お前、そんな沢庵のことで
この大立ち回りかよォ。

お崎さん、お前さんもそう
だよォ。亭主が沢庵食べたい
と言ったら、それぐらいの
ものは出してやりな


女房: ・・・(絞り出すよう
な声で)大家さん、(一調子
上げて)大家さん!・・・
あたしね、沢庵の一枚や二枚
でもってそんなこと言うよう
な、そんな、そんな女じゃあり
ませんよ。これにはもっと
もっと深い訳があるんです。


その3に続きます。