【謹告】  

   痛い話です。












梅図かずおの傑作短篇に
「ねがい」があります。


さびしい男の子が人形を
作る話で、小さい私は読ん
で本当にうなされた。

怖いだけじゃなく、悲しみ
にも満ち、今も忘れられません。

でも読み返すのがためら
われるのは人形のせいで、
名前はモクメ。


彼の何がイヤかと言って
歯がイヤだ。

釘なんです。

そのへんの材料で拵えた
とはいえ、歯に釘はない。
ダメ。


っていうか自分がモクメに
なったら、と考えるとさら
に玉らぬ。


常時口は金臭く舌は痺れ、
ものを食べる時は常に唇を
破らぬよう細心の注意を
払うから飯はまずい。

キスも基本拒否でしょう。
危ないから。



どうも私は「歯」に過敏な
ようで、映画ヘルレイザーに
登場する怪物チャタラーも
たまんないです。

悪者グループの一味なんだ
けど、上下の唇をぎよーん
と引っ張っているから目は
隠れて歯茎丸出し、あろう
ことか常時カチカチ歯を鳴ら
している。


特に悪さはしなかったと
思うけど、そばには居て
ほしくない。

なのにじっと見てしまう
私の心がわからない。





きっと「そうなったらいや」
ってことで、刺激されてる
んですが、歯に対する怖れ
は母に幼い頃起きた事件の
話を聞いてからです。


戦争に負けて間もなく
歯医者にかかった母は
家に戻り床に就いて苦しみ
はじめた。

物資不足といえど、その
糞医者は充填材にセメントを
使ったらしく、それが膨張
し激痛を引き起こす。


鏨を使い、取り除く。



母は稀に思い出しその時
の話をしますが、表情を
見ると痛みの記憶は何十年
経った今も消えていないようです。


[ その他 ] 09/03/16 (月)