福岡は久しぶりの雨で、
ぼたぼた大粒。
うすら寒くて湿気が毛穴に
入り込む。
こういう日は三汁一菜の
明石焼を食べる。
店は東京。
だけど、頭の中では瞬間移動
できるから、今私は歌舞伎町の
小道にいる。
一階は焼鳥屋で、脇の急な
階段を下り、引き戸を開け
カウンター右奥に座る。
おしぼり受け取って生ビールを
頼み顔を拭く。
黒板の品書き、客席前に並んだ
大鉢のおばんさいをよく見て、
ぎゅーーーーっとビールを飲む。
焼き魚とおひたし、豚角煮を頼み
ちょっと考え焼おにぎりひとつを追加。
お通し食べおわる頃、おひたしと
角煮到着。
おにぎりが来るまで角煮を
食べ尽くさないよう注意する。
クリアな喉ごし、香り高い
ビールを二杯飲んだあたりで
焼き魚到着。
魚の脂のりを観察し、
三杯目のお代わり。
どんどん気分が晴れていく。
それが残り五分の一になったら
日本酒に移る。
酒は一杯だけと決めたのに
魚との相性がいいからもう一杯。
メニューは頭に入っているけど
いつも熟読してしまう。
棒々鶏、あるいは梅叩きが
食べたくなる。
目の前で焼そばを作っている。
ジュージュー香ばしい。
食いたい。
思いは千々に乱れ、キンと冷えた
蕎麦焼酎で心を鎮める。
酔っ払ってまいりました。
明石焼の気運高まり、山芋と
プレーンを半々で注文。
タコを切り、生地を片口に入れ
撹拌。
鉄板に油を塗り火を入れ、
生地を流す。
ジュー、と音が聞こえ胸が
高鳴る。
続いてタコ山芋投入。
しばらくするとクツクツして
生地が固まり始め、千枚通し
二本を使い、くるりと返す。
とても手早く。
さっきまで液体だったのに
丸っこくなっている。
黄色と焼き色のコントラスト。
三ッ葉を浮かせた出汁の椀が
出てきて、生ビールをお代わり。
出汁を一口すする。
年季が入りすぎて少し斜めに
なった木製の台を鉄板にかぶせ
持ち上げ、引っ繰り返す。
運命の瞬間。
十個の丸平べったい明石焼が
「こんちは」と顔を出す。
丸っこく黄色くて板の上に
整列していて、それを見れば
どうしても笑ってしまう。
かわいい。
出す時「熱いですから…」と
親方は必ず言う。
両手で受け取り、そっと箸で掴み
そっと出汁に沈める。
辛抱たまらず丸のままパクリ。
何回となく食べているのに
やはり熱い。
猛烈に熱い。
口を開け空気を入れる。
なぜか顎が上がり、頭は
天井を向く。
出汁の香り、タコの弾力、
トロとした生地。
これらは感じるけど、味は
分からない。
でも熱くて柔らかくておいしい。
半分食べたあたりで程よく冷えた
明石焼は、生地に入った玉子の
風味が強く出る。
唐辛子を本体に振り出汁を
ちょっと付けて食べる。
ピリっと辛くてほんのり甘い。
あっと言う間に食べ終え
満足した私は黒糖焼酎を
頼みます。
[ 食べ物 ] 07/11/05 (月)