「お子さまディナーショー」と
いうものが昔ありました。
出演は仮面ライダー、ショッカー怪人
そして戦闘員。
客はテーブルに就き、ジュースとお菓子
食べつつ、ライダーが戦うさまを見物します。
私は母と妹。
学校の友達Yくんも、お母さんと一緒。
ライダー登場前、怪人は客席を
廻りながら、
「ヒヒヒお前も改造してやるぅ」
とか言う。
これが怖かった。
テレビで毎週見る番組は、
本当の出来事なのだ。
近づく怪人。
私は立ち上がり、椅子の後ろに
身を隠し母のスカートを掴む。
隠れながら目が離せない。
ゴムとウレタンで作られたマスク
は凸凹して、毒々しい色合い。
両腕を広げ、ワシャワシャと
手を動かす。
友達は、すごいスピードで頭を
机の下に隠し、ヒィと鳴く。
右の親指をしゃぶりながら
泣くから、声がくぐもる。
自分も玉が縮みあがっているのに
その声聞いて「怖がりすぎだろ」と思う。
Yくんは正真正銘の怖がり。
私はそれをダシにして、よく
「怖い話ごっこ」をした。
ネタはないけど、声を低くし
うつむき加減で、
「前におじさんにきいた話で…」
と、言う。
それだけで、Yくんは体を
固くする。
「夜、車で…」
体育座りで足を抱き締める。
私はグイと近付き、目を見て
「トンネルに入ったら…」
親指をキューキューとしゃぶり
始めるYくん。
「…なにか声が聞こえる」
「なにを言ってるか分からない
けど、誰かがなにかを…」
ベッドに、にじり寄るYくん。
半泣きです。
「トンネル抜ける瞬間!」
さらに顔を近付け、
「お前を!」
すごいスピードで、ベッドの下に潜り込む。
私も頭を突っ込む。
両手で耳を押さえているから、大声で
「ぅおぅまぇえぇぇをぉおっ!」
泣き叫ぶYくん。
ヒィィィと泣く。
ぞくぞくします。
繰り返し遊んでいたら、Yくんは
前振りだけで泣くようになった
ので「怖い話ごっこ」は自然と止めた。
実にいい泣きかたしてました、
Yくん。
元気にしてますか?
[ むかし ] 07/05/28 (月)