そうじゃないかと思っていた。少しだけ。もしくは理想として。
でも、まさか現実になるとは考えてなかった。
ただの生理不順にしては長すぎた。
ストレスや環境で生理が遅れていると思おうとしていた。だって、彼はコンドームを着けない日は一度もなかった。

目の奥と頭の芯がズキズキと痛む。そういう悪阻があるらしい。
私は目の奥と頭の芯が痛くなることで子宮に子供がいることをうっすら自覚した。現実問題として、私のお腹には子供がいる。
そう、現実問題として。
和希にどう言おう。
言わないという選択ができるほど私は強くはない。私だって、彼の選択に賭けてみたい。
子供の産めない愛妻家の彼にとって私は欠如しえない選択肢なのかを。
昨日、仕事を休んで産婦人科へ行った。

できるだけ郊外の病院を選んだ。
知り合いにも顔見知りにでも、誰にも会いたくはなかった。

足は重い。

どう補のカーブミラーも重そうな鉛色がうつっている。

三階建ての住居兼病院はかつては、白い壁だったという名残が至る所に見受けられたが所々のひび割れを補強したコンクリートのせいで余計にうらぶれて見えた。
実際、両隣の会社の建物の方がはるかに小ぎれいで病院風に見える。
働いている人たちも疲れていてうらぶれて見えた。
その、うらぶれている人たちの前で冷たい分娩台に乗って股を開いた。

私は、妊娠八週目に入っていた。
目の前の便せんには、白紙のままなにも書けなかった。
わたしは何をどう伝えたらいいのかわからない。伝えたいことは山ほどあった。ただ改まって伝えようと決心すると山ほどあった事が絡まってこんがらかって、混乱した。
本当は単純なことなのだ。

たぶん。