病気に発展も? 歯の「かみしめ」「食いしばり」の原因と改善・予防法(1)

6/2(火) 8:10配信 オトナンサー


かみしめ癖に効果的なマウスピース


 日頃、「上下の歯の状態」を意識して生活している人は少ないと思います。歯の「かみしめ」「食いしばり」の癖というと、力を入れて思い切りかみしめる姿をイメージしますが、何もしていないときに少しでも歯が触れ合っていると、たとえ強くかんでいなくても歯や顎に悪影響が出るようです。ネット上では「ずっとかみしめているかも」「かみしめ癖で歯がすり減っていると言われた」などの声が上がっています。


「かみしめ癖」について、吉祥寺まさむねデンタルクリニック理事で歯科医師の園田茉莉子さんに聞きました。


男性で60キロ程度の負荷


Q.通常時、上下の歯はどのような状態が望ましいのでしょうか。


園田さん「これを読んでいる今、お口はどのような状態になっているでしょうか。唇は閉じていますか? 開いていますか? 上下の歯をかんでいますか? それとも隙間がありますか? もし唇が閉じていて、歯をかんでいないのであれば、安静時の口元は問題がないといえるでしょう。筋肉も靭帯(じんたい)も全てがリラックスしている状態で、上の歯と下の歯の間は2~3ミリほど開いているはずです」


Q.何もしていないときに少しでも上下の歯が触れ合っていると、それだけで「かみしめ」「食いしばり」というのでしょうか。


園田さん「かみしめ、食いしばりは強い力で上下の歯をかみ合わせることです。上下の歯が軽く触れる程度では、かみしめ、食いしばりとはいえませんが、食事以外で歯の接触が常態化していることをTCH(Tooth Contact Habit=歯列接触癖)といい、筋肉や靭帯、歯がリラックスできず、さまざまな部位に負担がかかります」


Q.かみしめ、食いしばりと「歯ぎしり」の違いは。


園田さん「歯は基本的には食べ物をかみ切り、かみつぶすためにあります。つまり、本来は食事のときだけに機能するはずの器官ですが、本来の目的のとき以外に上下の歯をすり合わせたり、かみしめたりして接触させる動作は次の3つに分類されます。


・歯ぎしり…上下の歯を前後左右にすり合わせる運動で、睡眠時に起こることが多いです。ギシギシ、ギリギリと音が立つほどの力がかかることもあります。


・かみしめ、食いしばり…上下の歯を強くかみ合わせる動作のことです。音は立ちにくく、睡眠時にも覚醒時にも起こることがあります。


・タッピング…上下の歯をカチカチと何度もかみ合わせる動きです。

歯ぎしりは口元が動いて音もするので周りが気付きやすいですが、かみしめや食いしばりは音がしないので周囲も本人も気付きにくいです。かみしめ、食いしばりと歯ぎしりのどちらが出やすいかは人によります。複合的に出ることもあります」


Q.かみしめや歯ぎしり、TCHの原因は。


園田さん「それぞれの原因は、睡眠時と覚醒時とで異なります。


睡眠時に起こるかみしめ、歯ぎしりは睡眠中の脳の活動によって引き起こされることが分かっています。これには、ストレス▽性格▽遺伝▽飲酒▽喫煙▽特定薬の服薬▽特定疾患などが関与していると考えられます。かみ合わせが原因との説もありますが、科学的根拠は示されていません。高い枕で上下の顎が近い位置関係になり、かみしめや食いしばり、歯ぎしりを起こしやすくなっている可能性もあります。


一方、覚醒時のかみしめやTCHもストレスが関係する場合がありますが、作業などに過度に集中しているときにかみしめたり、意識的に行っていたりする場合もあり、生活や環境の中で付いた“癖”と考えられます」


Q.かみしめ癖などを放置すると、どうなるのでしょうか。


園田さん「食事で歯が接触する時間は1日計20分程度といわれます。しかし、かみしめ癖などで長時間上下の歯が接触すると、その分、正常でない力がかかり続けることになります。その力は男性で60キログラム程度です。


人体の中で最も硬い歯といえども、次第にすり減ったり、根元が欠けたりします。それに伴い、知覚過敏や虫歯のリスクが高くなる他、歯茎の炎症、痛み、出血、骨が溶けるなど、歯周組織にも症状が出ることがあります。顎の関節にも負担がかかります。口を大きく開けたときにカクカク音がするなど『顎関節症』の症状がみられたり、顎周りや首周りの筋肉に痛み、凝りを感じたりすることもあります」


病気に発展も? 歯の「かみしめ」「食いしばり」の原因と改善・予防法(2)