【Q&A】入れ歯は歯周病を悪化させる? インプラントも歯周病になるの?〈dot.〉

5/22(金) 17:00配信 AERA dot.




(イラスト/渡辺裕子)


「歯周病」という病名は広く一般の方々に認知されるようになりました。しかし、歯周病についての正しい情報が得られているとはいえません。日本歯周病学会・日本臨床歯周病学会は、国民に歯周病について正しい情報を伝える公式本『続・日本人はこうして歯を失っていく』を発刊しました。本書から、「入れ歯は歯周病を悪化させる?」「インプラントも歯周病になるの?」など、Q&Aの一部を抜粋してお届けします。


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Q 歯周病で減ってしまった骨は治るの?


A 中等度までなら治るケースが多い

 歯周病で歯を支えている顎の骨(歯槽骨)が減ってしまっても、歯周病の基本治療や外科手術で、歯や歯根に付着したプラークや汚染した歯根表面をきれいにすることができれば、からだ本来の治癒力により、一定量の骨が再生されることがわかっています。


 一方、生体材料や薬剤を使って骨を再生させる、「歯周組織再生療法」も広くおこなわれています。患者さんにより効果が出るまでに差はありますが、中等度までの歯周病で適応条件が満たされた状態であれば半年から9カ月で骨が再生します。歯槽骨が大きく失われ、歯がグラグラしているような場合は治療対象にならないことが多いのです。


Q 入れ歯は歯周病を悪化させる?


A バネを引っかける歯は悪くなる

 失われた歯やかみ合わせを補う「部分入れ歯」は残った歯に「クラスプ」という、金属のバネを引っかけて使います。このため歯に負担がかかりやすく、歯周病がある場合は進行のリスクになりえます。セルフ・ケアやメインテナンスが不十分だと、歯周病が進み、歯がダメになる危険もあるので、リスクを十分に考えた上で治療を受けるべきでしょう。


 なお、最近はバネの見えないノンクラスプデンチャーが普及していますが、バネがない分、歯を大きく覆うので、プラークが付着しやすいだけではなく、自浄性が悪いため歯周病予防の観点からするとおすすめできません。


Q インプラントも歯周病になるの?


A インプラント周囲炎になる可能性がある

 インプラント治療後に注意しなければならないトラブルの代表が、インプラント周囲炎です。インプラント周囲炎は、天然歯の歯周病と同じようにインプラント周囲の歯肉が歯周病菌によって炎症を起こし、インプラントが埋入されている歯槽骨が破壊される状態をいいます。


 インプラントを入れることになった理由の多くは、歯周病により歯を失ったことです。このため残っている歯も歯周病である場合が多く、インプラント周囲炎を起こしやすい原因となるのです。


Q 骨粗鬆症治療薬を飲んでいて歯周病の治療はできるの?


A 外科手術以外の治療は問題ない

 骨粗鬆症治療薬の一つである「ビスフォスフォネート製剤」を服用している患者さんに抜歯などの外科治療をおこなうと、使用期間にもよりますが、頻度は少ないものの顎の骨の壊死が起こることがあります。このため歯周病で抜歯や歯周外科治療をおこなう場合は、服用の中止など、原則として内科担当医らとの相談が必要です。


 その代わりに外科処置ではないプラークコントロールやスケーリングを徹底しておこないます。外科治療がどうしても必要な場合は、医師とも連携しながら、適切な方法を考えることになります。


※『続・日本人はこうして歯を失っていく』より