元難民高等弁務官、緒方貞子さん死去、92歳

毎日新聞10/29(火) 11:56


緒方貞子さん=2012年12月10日、小出洋平撮影

 国連難民高等弁務官として難民救援の先頭に立ち、国際協力機構(JICA)理事長として日本の政府開発援助(ODA)改革に取り組むなど国際協力分野で功績を残した緒方貞子さんが死去したことが29日、わかった。92歳。


 1927年東京生まれ。51年に聖心女子大卒業後、米ジョージタウン大で修士号、カリフォルニア大バークリー校で博士号を取得し、国際政治学者の道を歩んだ。国際基督教大講師などを務めていた68年、国際政治に対する見識や英語力を買われて国連総会の日本政府代表顧問に就任したのを機に、国連人権委員会や軍縮特別総会の日本代表を務めるなど国連関係の活動を本格化させた。


 91年、国際社会で幅広い人脈を駆使して問題に取り組む手腕が評価され、日本人では2人目の国連機関トップである第8代国連難民高等弁務官に就任した。冷戦終結後の民族紛争が相次いだ時期に重なり、ユーゴスラビア、ザイール(現コンゴ民主共和国)、チェチェン、東ティモールなどの紛争地に足を運び、難民救援を指揮した。紛争当事者との対決も辞さない毅然(きぜん)とした姿勢は幅広い支持を集め、民衆の視点に立った国際平和活動の象徴的存在となった。


 退任後は日本政府主導で設立された「人間の安全保障委員会」の共同議長に就任し、既存の国家中心の安全保障から個人を中心に据えた安全保障政策への転換を訴えた。米同時多発テロ後の2002年1月に東京で開催された「アフガニスタン復興支援国際会議」では日本政府代表、共同議長を務め、弁務官としての経験を基に平和構築に取り組んだ。


 田中真紀子外相更迭(02年1月)の後など2度にわたって外相就任を要請されたが、いずれも固辞。03~12年、JICAの理事長を務め、紛争後の平和構築への支援強化などODA改革に取り組んだ。


【緒方貞子さんの歩み】

1927年 東京都生まれ

51年  聖心女子大を卒業

53年  米ワシントンDCのジョージタウン大で国際関係論の修士号を取得

63年 米カリフォルニア大バークリー校で政治学博士号を取得

74~76年国際基督教大で外交史、国際関係論を講義

76~78年 国連日本政府代表部公使

78~79年 国連日本政府代表部特命全権公使。ユニセフ執行理事会議長

80年 上智大教授

82~85年国連人権委員会日本政府代表

83~87年国際人権問題委員会委員

89年 上智大外国語学部長

90年 国連人権委員会でミャンマーの人権状況を調査

91年1月第8代国連難民高等弁務官に就任

2000年12月同弁務官退任

02年1月アフガニスタン復興支援国際会議で日本政府代表、共同議長

03年10月国際協力機構(JICA)理事長に就任

12年3月 同理事長退任