朝、6時に、自然に目が覚めた。


ドミトリーの二段ベッドの上段に寝ていた。

昨晩は下の人のいびきが煩さ過ぎて、イヤホンしてクリスタルボウルミュージックを聴きながら眠った。

クリスタルボウルのリラックス効果は絶大で、かなりな音量で聴いても、副交感神経優位になるのか、私は気づかぬ間にこんこんと眠りについたようだ。
途中で目がさめる事はなかった。


布団から手を伸ばして、窓のカーテンを少しだけ開ける。

結露した窓から、遠くの空が白み始めているのが分かる。

あともう30分だけ寝よう…。

私は再びまどろみ始める。

夢の記憶が消えてしまう前に夢で見た光景を反芻する。



…毒ガスにやられた飛行船から、これまた毒ガスにやられている地上に、私は落ちた。

地上には毒ガスにやられた人々が横たわっている。
死んでるのか弱っているのか、おそらくその両方。

私はふんわりと地上に落ち、私もガスにやられちゃうじゃん、と思うが、手にはガスマスクを持っていて、それでなんとかなっている。

私は私の力を取り戻すべく、まん丸いφ10cm程の水晶玉に両手をかざし、力の復活を待っている。

手をかざしていると水晶玉は光を放ち始める。

そんな光景を、壁を背にしてクシャナが遠くから見守っている。

私は、肩の出る白いレースのドレスを着ていて、頭には正装の被り物をしている。

荒廃した大地に似合わない清楚な感じの正装でいる…。



現の世界ではそんな服装は持ってもいないし着たこともない。



そんな所で、目が覚めた。


6時半になんとか体を起こし、もそもそと着替えをする。
外はどう考えても寒いから、ヒートテックの股引とインナーとハイネックと暖パンと、上下ユニクロの保温製品で固める。

荷物をまとめ、階下におり、身支度を整え、外に出る。
昨晩買ったシュークリームを頬張りながら歩き始める。
日の出前だが、外は明るく、むちゃくちゃ寒い。
シュークリームを食べる為に外気にさらされている私の手は、凍傷になるんじゃないか、というくらい冷たくて痛くなりだす。

寒いところにでると、私の体は中枢の体温を守るためか、抹消の血管を異常に収縮させる傾向がある。

だから、手足が異常に冷たく、そして痛くなる。

足の方はUGGブーツに助けられている。
さすが羊。

シュークリームを食べ終わるとすぐに手を温めようとするが、痛いのが治らない。

これでは道中しんどいので、目の前に現れたコンビニに入り、ホット飲料売り場に直行する。

缶コーヒーをしばらく握りしめる。
ようやく手の温度が戻ったところで、缶コーヒーを買って外に出る。

外に出ると、缶コーヒーはすぐに冷めてしまった。
おそらく氷点下の寒さだったんだろう。

目的地まで一時間ほど歩く予定。

とにかく、ひたすら、ひたすら歩き続ける。

しばらくして、振り返ると、そこには巨大な富士山が、頭だけ隠して佇んでいた。



裾野の大地が朝日に照らされて、紅に光っていた。

なんと神々しいことか。

富士山ってやっぱりすごいや。


振り返り振り返り、富士山を眺めながら、忍野八海一番霊場、出口池に到着。

観光客の集まるスポットとは離れていて、誰もいない。

せせらぎの音が聞こえるほかは何も聞こえない。



目を閉じて、エネルギーを感じてみる。

私にはサイキック能力はないから、そこのエネルギーがどうゆう質のものか分からないけれど、胸腹の前面に大きな暖かい塊を感じた。


エネルギー、あげるよ、と。


そして、ふと、自分の立ち位置に気づく。

私は、エネルギー吸収体なんだ、と。
いろんなところからエネルギーを吸収している。

私を頼りに来る人達はそれをお裾分けしてもらいにくるのだ、と。

私は、エネルギー吸収体。
そして、それを、求める人に分配するのが私の役目。

雲から差した朝日が、私にそう教えた。


遠くの方で魚が跳ね、静寂を破る。




もうしばらく歩いた所で、忍野八海の観光スポットが現れた。

朝8時だというのに、後から後から、中国人観光客が大量に押し寄せる。

そんな大群の旅行客に唖然としつつも、お土産屋さんの中を通らないと入れない水深8mの池は見ものだった。

透明度、半端ない。

池を泳ぐイワナ?、も、白かったり青かったり、キレイだった。





突如思いついた、行き当たりばったりのshort trip。
日々の生活が忙しく、余裕がなくても、思い切りさえすれば、私はどこへでも行けるんだ。

もっと冒険して楽しんでいこう。