自分にとってここ数年で一番のビッグイベントが終了しました。

 

石田ショーキチ30周年イベント2日目、MOTORWORKS復活ライブ。

とにかく最高の一言に尽きる、生涯忘れられない夜になりました。

 

 

ショーキチさんから今回のライブのお話を頂いたのは春先の事。

 

それまでもちょくちょく自分の事を気にかけてくれては

連絡をくれたりしていたのですが

(moke(s)のライブに突然ふらっと遊びに来てくれたりもしました)、

今回は「実は町田君にお願いがあるんだけど」といつもとは違う話の切り出し方で、

「町田くん、今度俺のデビュー30周年イベントをやるんだけど、俺のバンドで歌ってくれない?」

というLINEが来た時には

「え!??」っと意味を理解するのに数秒時間が必要でした。

 

「俺のバンドってなんの事だろう・・・石田ショーキチグループの事かな?

でもそれだとショーキチさんが歌わないとおかしいしな・・・

なんにせよショーキチさんからお願いされることなんて滅多にないんだから、ここは快諾しよう!」

 

そう思い、割と即答に近い形で「ありがとうございます。僕で良ければ是非!」と返したところ

想像もしていなかったまさかの返信が・・・

 

 

「サンキュー!で、そのバンド、MOTORWORKSっていうんだけどさ、知ってる?」

 

 

「!!!!????」

 

 

これには本当一瞬完全に頭が真っ白になりました。

 

 

「モ、モ、モ、MOTORWORKS~!!!????

 

っていうことは亡くなった黒沢健一さんの代わりに歌えって事ですか!???」

 

 

「そうそう。君が適任だと思ったんだよね」

 

 

自分が適任って・・・そんなわけないじゃないですか!

だってオリジナルボーカリストはあの黒沢健一さんですよ??

化け物のような方ですよ??

考え直してください!!!

 

 

そんな言葉が出かけた瞬間に

 

「体からロックンロールがあふれ出ているようなボーカリストって他にあんまり浮かばなくてさ。

MOTORWORKSにはそういうボーカリストが必要なんだよ。他のメンバーもきっと賛成してくれるはずだよ」

 

というLINEが届き、

 

その瞬間純粋にショーキチさんがそこまで自分をロッカーとして評価してくれていたことの感動が

それ以外のすべての感情勝ってしまい、自分の中で断る理由が無くなってゆくことに気が付きました。

 

 

「はい、わかりました。がんばります!」

 

と改めて快諾の返事をし、

一通りの会話を終え、冷静になってから思いました。

 

 

「これはドエライことになったぞ・・・」

 

 

 

 

 

それから、急いでMOTORWORKSの作品を聴き返し、

予習をする日々が続きました。

発売当時にもCDを頂き聴いてはいたものの

まさか自分が演奏歌唱する日が来ると思って聴いていなかったので

改めてMOTORWORKSを聴き返してみると

その演奏のカッコよさとメロディーのポップさに

すっかり虜になりました。

 

それにしても黒沢さんは本当に歌が上手い・・・

しかも普段自分が歌っている歌のキーのはるか上をいく

キーの高さ。

これを自分に歌いこなせるのか・・・?

しかし引き受けた以上はやるしかない。

 

 

 

ギターに関しても割と2本しっかりと鳴っているアレンジの曲が多く、

ボーカルだからといってあまりサボれる感じではなさそうだ。

幸いなことに直ぐに体に馴染んでくれるタイプの曲調が多いから

ギター演奏に関してはなんとかいけるだろう。

でもよく考えりゃ散々ショーキチさんや黒沢さんの音楽に影響を受けてきた人生なのだから

この二人が作る音楽が体に馴染むのは当然なんだよな、なんてことも思ったり。

 

 

 

そんなこんなで少しずつMOTORWORKSの音楽を体に入れてゆく中で

一発目のリハーサルが決まり、ショーキチさん、そしてドラムのサンコンJr.

さんと3人でスタジオに入りました(ベースの田村さん、キーボードのクージーさんは

スピッツのツアー中だったため不参加)。

 

初対面のサンコンさんは挨拶の時からずっと優しく、そのおかげで

かなり気持ちが楽になりました。

優しい人柄に反するかのようなパワフルなドラミング。

こんなにすべてのキットの音量が均一して大きい(それでいて喧しくないのが凄い)ドラムを叩く人と一緒にやるのは

初めてで、その迫力に「やっぱすごいな」と感動。どんなに荒く叩いているようでもリズムの芯がブレることがない。

あのウルフルズのグルーブの柱はこの方なんだと思うと、そんな方の叩くドラムをバックに歌えることに

改めて興奮しました。

 

 

 

2回目のリハーサルはショーキチさんと2人きりでのコーラス特訓。

ショーキチさんから沢山のレクチャーを頂き、非常に為になりました。

特に英語の発音に関するレクチャーは目から鱗で、

今後も役に立ちそうです。

 

 

3回目のリハーサルからはスピッツのツアーの合間を縫って田村さんとクージーさんが参加。

 

田村さんは以前スピッツとBUNGEEが共演したことをちゃんと覚えてくれていて、

開口一番にその話をしてくれたことにいたく感動しました。

 

 

クージーさんは終始優しいお姉さんという感じで、自分の緊張を感じ取ってか

所々で優しく話しかけてくれたり、色々気を使ってくれたりと本当にありがたかったです。

 

 

メンバーが勢ぞろいして一発目の音を出した瞬間に

完全にMOTORWORKSのサウンドで、そのクオリティに圧倒されました。

ショーキチさんがギターを弾きまくる。ずっと聴いてきたお馴染みの音だ。

田村さんのベースがうねる。歌う。なんだこれは・・・こんなプレイ聴いたことがない。

クージーさんのキーボードが入ると一気に音の景色が広がる。気持ちいい。

改めてこんな凄い演奏者の中に混じって演奏できることが誇らしく思いました。

 

 

 

しかし、リハーサルを重ねるごとに自分の中にまた複雑な思いが

ぶり返していることに気が付きました。

 

 

それは沢山MOTORWORKSの音源を聴いて演奏すればするほど

黒沢さんの存在の大きさを痛感し、

「本当に本当に俺がこのバンドで歌うべきなのか?」

という思いでした。

 

 

元々L⇔Rが大好きで、ずっと聴いてきた自分にとって

黒沢健一さんという方はやはり特別な存在で、

どう考えてもボーカリストとしてのタイプが違う自分が

歌っていいのか・・・・

 

 

純粋にMOTORWORKSの、そして黒沢さんのファンとして

葛藤している自分がそこにいました。

 

偉大なミュージシャンである故人の代わりを、自分のような世間から知られた存在でもない

ミュージシャンがやる。そんな話、世界的にもあまり聞いたことがない。

 

 

 

その思いは結局ライブ当日まで引きずることになりました。

 

 

 

でもサウンドチェックを終えてFEVERの楽屋で椅子に腰かけているとき、

不思議とごく自然に気持ちが高揚してゆくのがわかりました。

 

 

「やるしかない」

 

 

自分が戸惑いの気持ちを持ったままステージに上がることは

結局ショーキチさんにもメンバーの方々にもお客さんにも

そして黒沢さんにも一番失礼なことなのではないか。

 

 

そう思えた瞬間に自分の中でグッとスイッチが入ったのがわかりました。

 

 

「出番でーす」

 

ステージスタッフの方の声が響き、ステージ脇に向かう途中で

ショーキチさんが自分の肩を掴み、

 

「町田、頼んだぞ」

 

と言いました。

 

 

 

「MOTORWORKSです!」

そうショーキチさんが発すると割れんばかりの歓声が。

 

1曲目のイントロリフをショーキチさんが弾き始め、

サンコンさん、田村さん、そして自分のギターが同時に入り

ライブがスタート。

 

目の前には待ってましたと言わんばかりの沢山のお客さんが身体を揺らすのが見え、

これだけの人がこの夜を楽しみに待っていたのかと思うと

ひたすら胸が熱くなりました。

 

 

 

その後はただもう必死で、そして楽しくて

時間が流れるのがあっという間で

気が付いたら本編が終了していました。

 

 

アンコールの1曲目に用意したのは

自分がリクエストしたSPIRAL LIFEの「GARDEN」。

 

 

この曲をショーキチさんに対してやりたいと伝える事は何気に勇気が要りました。

ショーキチさんにとってもSPIRAL LIFEの楽曲に対してはきっと特別な気持ちがある事は

自分もなんとなく感じ取っていたし、やるとなると自分が今度は車谷さんの代役をやることになる

プレッシャーも背負わなくてはいけないので、伝えない方が安パイなことはわかっていましたが、

それでも自分にはこの曲を演奏したい想いがありました。

 

「GARDEN」は自分が高校の時組んでいたバンドでずっとコピーしていた曲で、

当時の邦楽シーンに於いて、この曲が与えたインパクトはとんでもなかったと思っているからです。

 

きっと自分以外にもこの曲をショーキチさんのステージで聴きたい人がいるはず・・・

そう信じてリクエストしたところ、ショーキチさんが快諾してくれたときは

天に舞い上がる想いでした。

 

 

カウントからこの曲のイントロが始まった瞬間の客席からの悲鳴のような歓声が聞こえたときに

「ああ良かった、俺は間違えてなかった!」とあらゆる感情が胸にあふれだし

感極まりすぎて危うく歌えなくなるところでした。

 

 

 

ライブのラストは田村さんのイントロベースが最高にかっこいいマーサ&ザ・ヴァンデラスのカバー

「HEAT WAVE」で大団円。

 

 

 

 
 

ショーキチさんが最後に放った

「健一!見てるかー!」

 

の一言には胸に来るものがありました。

 

 

自分もライブ中に「ここに黒沢さんがいてくれたらな」と思った瞬間があったので、

きっとショーキチさんには(もしかしたら他の方にも)、黒沢さんの姿が見えていたんだろうなと

思うと、感動せずにはいられませんでした。

 

 

楽屋に戻ってソファーに腰かけるとショーキチさんが真っ先に「町田、良くやってくれたありがとう!」

と言ってくれて、そしてサンコンさんも田村さんもクージーさんも優しく労ってくれて

ああ、この夜が無事に終わったのだという実感が徐々に湧いてきました。

 

 

時間が経ち、興奮も収まってくると色々と自分の演奏や歌唱に関しての反省も出てはきたものの、

最高のステージを用意して頂き、特別な経験をさせてもらったことへの感謝の気持ちで胸がいっぱいになりました。

 

お客さんは楽しんでくれただろうか。満足してくれただろうか。

それもすごく気になりました。

(自分がボーカルだったことに対し)複雑な気持ちだった方もきっといただろうな。

そんな事も思いました。

 

 

でも、自分がステージから見せてもらった光景はとても美しく、

そしてとても幸せな気持ちをもらえたことに間違いはないので、

今胸にある気持ちをずっと大事にしてゆこう、という結論に至りました。

 

 

打ち上げではショーキチさん、田村さん、サンコンさん、クージーさん

それぞれからとても身の引き締まる有難い言葉を頂き、非常に感激でした。

 

 

2023年9月2日は自分の音楽人生に於いて忘れられない特別な一日になりました。

 

 

ショーキチさん、改めて30周年おめでとうございます。

 

 

観てくれた皆さんも本当にありがとうございました。

 

 

 

これからも精進します!