【日本代表】久保建英 人気低下に危機感「もっと応援してほしい」 サポーターにお願い

 

結果を残した久保だが…

 日本代表MF久保建英(24=レアル・ソシエダード)が、代表人気に関する問題意識を持っている。 【写真】ゴールを決めた久保はこの表情  6―0で大勝した10日の北中米W杯アジア最終予選インドネシア戦(パナスタ)で久保はA代表10番初先発を果たし、キャプテンマークを巻いた。1ゴール、2アシストと結果を残した中、大挙押し寄せたインドネシアサポーターの大声援を踏まえ、試合後には自軍サポーターにお願いもしていた。「今日に関しては本当に(インドネシアと)五分五分ぐらいの歓声だったので、個人的にはもっと応援してほしい」  その上で「もっともっと日本のホームは簡単じゃないよってというのを、僕らの実力だったり、人気不足もあると思うけど、日本のファン・サポーターの方にはつくってほしい。僕らがインドネシアやサウジアラビアに行った時は圧倒されるものがあったので」。  近年、スター不在や代表戦の地上波放送が減ったなどの影響で代表人気低下が指摘されるが、久保もその問題を意識しているわけだ。  久保はその状況を打破できる可能性を秘めている存在だが、突き抜けた存在になることができるのか。  この日は「前回もできたら、コレオとかもやってほしいという話をしたけど、いろいろ規定とかもあって難しいとはいえ、これからそういったところも変わって、日本サッカーがより熱くなっていったらと思う」とも言った。

 

 

 

 

森下龍矢がゴールで示した成長の軌跡 日本代表で生き残るために必要な「崖っぷち」での意志の強さ

 

1年半ぶりの日本代表戦出場で1ゴール。森下龍矢は情熱あふれるプレーで存在感を発揮した 【Photo by Kenta Harada/Getty Images】

6点大勝。新戦力も続々デビューしたが……

 日本代表は6月10日に行われたFIFAワールドカップ(W杯)2026アジア最終予選第10節でインドネシア代表に6-0と快勝。チームキャプテンの遠藤航は「選手層という意味で日本代表には素晴らしい選手がいることを証明できた試合だったと思うし、また新たな競争が生まれることを期待しています」と総括した。

 同5日のオーストラリア代表戦を0-1で落としたものの、敗戦のショックを引きずることなくゴールラッシュで最終予選を締めくくることができた。6月シリーズの2試合を通して平河悠、俵積田晃太、鈴木淳之介、三戸舜介、佐野航大、佐藤龍之介といった新戦力が日本代表デビューを飾り、久しぶりに招集された選手たちもピッチ上で躍動。W杯本大会まであと1年というタイミングで選手層の厚みを増すことができたことは大きな収穫だ。

 遠藤も「新しく出た選手たちは戦術を気にしすぎず、まずは自分の良さを出すことにフォーカスしてくれればよかった。それをしっかりやってくれた。もちろんオーストラリア戦も勝てれば理想的でしたけど、(6月シリーズを通して)個々のパフォーマンスを見れば素晴らしいものだったんじゃないかなと思います」と、新戦力の台頭を好意的に捉えている。

 ただ、本当の意味での競争はここから。最終予選で継続的に出場機会を得ていた選手たちのほとんどが招集外になっていることも考えると、今回の6月シリーズでチャンスをつかんだ選手たちの中から1年後のW杯本大会に生き残れるのはごくわずかだろう。

 それどころかアメリカ遠征を予定している9月シリーズで再びメンバー入りするのも難しいかもしれない。森保一監督やスタッフ陣はピッチ上のパフォーマンスだけでなく、日常での振る舞いやチームに対する発信、周囲との関係性を築く過程で見せるパーソナリティもつぶさに観察しているはず。だが、プレーでもプレー以外の面でも日本代表に必要な人材だとアピールできた選手の数は少なかったように見える。

 

「人生を変えるため」の1試合

 

日本代表デビュー戦だった2023年6月のエルサルバドル代表戦は左サイドバックで先発フル出場 【Photo by Etsuo Hara/Getty Images】

 とはいえ可能性を感じる人材がゼロだったわけではない。例えばインドネシア戦に右ウィングバックとして先発起用された森下龍矢は、日本代表で何としても生き残るという意志の強さを感じた1人だった。

「明日は自分の人生を変えるためにプレーしたい」

 インドネシア戦前日の取材対応で、森下はそう言っていた。右ウィングバックでの先発が濃厚と思われていた中で、「ゴールやアシスト、目に見える結果だけを追い求めてプレーしたい」と言い切ったのも頼もしかった。

 そして、森下は有言実行を果たした。日本代表の3点リードで迎えた55分、左サイドに流れた町野修斗の折り返しに、右サイドから詰めていた17番が右足インサイドで丁寧に合わせる。シュートは相手選手のブロックを掻い潜ってゴールネットに収まった。

 ボールが逆サイドにあっても、チャンスになる可能性があるなら「そこに常に走り込む。労を惜しまずそこまでいけるところが僕の強み」だと森下は言う。インドネシア戦のゴールシーンも「町野が顔をパッと上げた瞬間には、もう決められるところに立っているくらいの感覚でいつも入っている。早すぎるとか早すぎないとかは難しいので、とにかく間に合っていればOK」という、地道に体に染み込ませてきた感覚が完璧なタイミングでのボレーシュートにつながった。

「ポーランドでもああいう形はいっぱいありましたし、落ち着いてゴールを決めることができたというのが総括になりますけど、それよりも逆サイドにボールがあるときに、今回の試合も毎回(ゴール前まで)入っていたので、それが結局ゴールにつながったんじゃないかと思っています」

 森下は第2次森保ジャパンが発足してすぐの2023年6月に初招集を受け、同月15日のエルサルバドル代表戦で日本代表デビューを飾った。だが、続く9月シリーズのドイツ遠征では招集されながらも出番なし。以降は2024年1月1日のタイ代表戦に出場したのを最後に約1年半、日本代表から遠ざかった。

 再びサムライブルーのユニフォームをまとってW杯へ。その思いを胸に、タイ代表戦を終えた森下は海外挑戦を決断する。名古屋グランパスからの移籍先に選んだのは、ポーランドの強豪レギア・ワルシャワだった。

 新天地では変化を迫られた。よく「環境が人を変える」と言われるが、英語で自分の考えを主張できなければ相手にされず、ゴールやアシストの数字で評価される世界に身を投じたことで考え方は大きく変わった。今でも「英語は100がネイティブだとすれば、まだ20くらい。残りの80はパッションで何とか(笑)」だというが、着実に信頼をつかんで半年で期限付き移籍から完全移籍に移行。「地獄の煮え湯くらい熱かった」熱狂的なレギアのサポーターにも認められ、「1年半一緒にいろいろな荒波を渡っていくと、彼らの熱さが居心地いいなと思うようになりました」とポーランドに染まった。

「僕は(名古屋からの)期限付き移籍だったので、『ここで結果を残さないと日本に帰らなきゃいけなくなる』という切迫感というか、崖っぷち感が自分を成長させてくれました」

 そして、今季は公式戦48試合に出場して14得点14アシスト。国内カップ戦決勝で1得点2アシストを記録してレギアの優勝に貢献し、大会得点王にも輝いた。起用ポジションも名古屋時代のサイドバックではなく、ウィングやインサイドハーフがメインになり、ときにはセンターFWも務めるなど大きく変化している。データ情報サイト『Transfermarkt』でも、今やメインポジションは「攻撃的MF」として登録されているほどだ。

海外移籍で変わったマインド

 

UCL準々決勝第2戦は右ウィングで先発してチェルシーに勝利。第1戦はセンターFWで奮闘した 【Photo by Jacques Feeney/Offside/Getty Images】

 結果を残し続けてつかんだ1年半ぶりの日本代表でのチャンス。何としても次につながる爪痕を残すべく、森下は燃えていた。生き残るためには「ゴールとアシスト。それだけ」だと。

「正直言って、もう28歳で、いいプレー云々じゃない。どちらかというとチームを物理的に救うゴールやアシストを期待されて代表に来ているし、ポーランドでも、結局ゴールを決めて成り上がってきた。代表でも同じことが言えるんじゃないかなと。もちろんいいゲームをしたいけど、勝つ、ゴールを決める。競争の中で成長したいし、本当に勝ちたい。それだけです」

 6月シリーズ1戦目のオーストラリア戦では出番なく、ベンチで試合終了のホイッスルを聴いた。「(23年9月の)トルコ代表戦で『1分でも出たい』と思って一生懸命アップしていましたけど、残念ながら出ることができなくて、あのときの悔しさがあるし、1試合目(オーストラリア戦)に出なかったので『もしかしたら今回もそうなるんじゃないか』とよぎることもあった」というが、「『出たらやるんだ!』というたくましさみたいなものをしっかりキープしたまま代表活動に取り組めて」ポーランドでの成長を感じながらインドネシア戦を迎えることができた。

 そして、あの美しいゴールである。レギアで磨き続けた「ゴールやアシスト」へのこだわり、競争を勝ち抜くための意志の強さが試される場で、しっかりと望んだ通りの結果を残して自らの存在価値を証明した。

 胸に抱く自信の大きさも、かつてとは違う。レギアは今季のUEFAカンファレンスリーグ準々決勝でチェルシーと対戦し、ホームでの第1戦を0-3で落としたものの、敵地スタンフォード・ブリッジでの第2戦に2-1で勝利。2試合とも先発出場した森下は、チームが敗退したものの「世界」との距離が縮まっていて、「自惚れているかもしれないですけど、意外とやれている」と決して手の届かない場所ではないことを実感した。

 同世代の三笘薫らが活躍する欧州のトップリーグでプレーすることが「憧れから目標に変わった」。チェルシー戦を経て、「今まで神格化していた存在を身近で、肌で感じることができて、より一層ああいう舞台でプレーしたいなと思いました」と、さらに上のステージを見据えられるようになった。「以前までは成長のためにいろいろなことを吸収して吸収して(学びに)変えるみたいな感じだったんですけど、今回の代表では成長するのはもちろん、自分の力を試しにきた」と日本代表での活動に臨むスタンスもガラリと変わった。

W杯まであと1年。生き残りの可能性は?

 

ゴールを決めても森下龍矢はまだまだ「崖っぷち」。9月シリーズにも招集される保証は一切ない 【Photo by Etsuo Hara/Getty Images】

 では、着実にステップを踏んでかつてない自信を胸に臨んだインドネシア戦は「自分の人生を変える」試合になったのか? 森下はこう答えた。

「なったんじゃないですか? でもゴールって不思議で、1点取るとドバッとくるんですよね、やっぱり。代表でもこの1点を契機に、3点、4点、5点と、10点くらいいきたいですね」

 ゴールへの意欲は尽きることがない。もはやマインドは「サイドバック森下」ではなく「アタッカー森下」になった。一方でインドネシア戦では右ウィングバックとして攻撃だけでなく守備でもハードワークし、「元サイドバック」として豊富な運動量を生かして攻守両面に貢献できることを示した。これまで右ウィングバックではウィング気質の強い堂安律や伊東純也が主に起用されてきたが、彼らと違う武器を持った信頼できる戦力であると森保監督も理解したことだろう。W杯本大会に向けて争っていける力は十分にあるという手応えもあったはずだ。

「今日はいいプレーしたねとか、今日はちょっとよくなかったねとか、そういう主観的な評価だけじゃなくて、自分に冷酷になって、ゴールを決めたか、アシストしたか、数字を残せたかと客観的な数字にすごくこだわりたいと思います。そういう意味では今回、一歩リードという感じではないかもしれないですけど、自分の中ですごく手応えがありましたし、この1点を積み重ねていくこと以外、28歳の僕が上にいける道はないんじゃないかと思っていますね」

 正直に言って、森下ほどのインパクトを残したとしても6月シリーズからW杯出場メンバーに生き残れる保証は一切ない。むしろ「崖っぷち」であることに変わりはないだろう。それでも彼と同等かそれ以上の野心と自信を日常から目一杯に表現し、クオリティをピッチ上で示すだけでなく、既存の選手たちの輪にもグイグイ入っていくようなコミュニケーション能力がなければ生き残っていくきっかけすらつかめない。それくらい今の日本代表の選手層は厚く、求められるレベルは上がっている。

 9月シリーズのアメリカ遠征では堂安や伊東がチームに戻ってくるはずだ。菅原由勢ら他にもライバルはたくさんいるが、そこに森下は食い込んでいけるか。W杯優勝のためにはチーム内競争の活性化が不可欠。6月シリーズでチャンスを与えられた新戦力たちがW杯本大会に向けた流れの中でどれだけの存在感を発揮していけるか、楽しみに見ていきたい。