父が亡くなりました


昨日の未明


自宅に鳴り響く一本の電話

嫌な予感がしながらも、最近の父は比較的安定した病状だったので、まさかと思いながら電話に出た


「呼吸が止まっています。」


私の呼吸も止まりそうになった


看護師さんの話では、夜の巡回までは普通の呼吸をしていたみたいで、夜中に栄養パックを持って病室に入った時には呼吸が止まっていたらしい


気が動転

とりあえず何をすれば良いか聞く


父の着替え用の服を持って来て欲しい、と


母は私からの報告を聞き、「あぁ…。」と落胆しながらも父の服を取り出した。

点滴や皮膚の擦り傷で傷だらけの腕だから、いくつかの候補から長袖シャツとジャージを取り出した


母も着替えて急いで車に乗る

こんなとき車があれば本当に便利

というかありがたい

父が数年前に買ってくれた新型シエンタ

父を何度も乗せたが、左半身麻痺なので降ろすのに母と二人で骨を折った


夜中の道は真っ暗

母も私も二人だからお互いに心強い


夜中の病院に着く

救急搬入口から入り、三階の病室へ

父は…………………………


いつもの父が寝ていた

いつものような表情で目を開けたまま

え?生きてるやん


「お父さん、なんか話してよ。」


呼びかけても無反応なのはいつもの面会でも慣れている

一年半の延命治療で鼻から喉へチューブを通していたから、無表情で話せなくなっていたから


元医者の父

元看護師の母


素人の私は父が生きてると期待してしまった

側にある心電図は0で鳴り響いているのに


母はこの時、父の顔が黄色くなっていることに気付いていた


父のおでこを触る

いつもの感触と体温

生きてるやん!

身体も温かい

生きてるやん!

口も数ヶ月前から大きく開いたままだったので驚かない

その日の昼間、面会に来た時も口を開けてガーガーとイビキみたいないつもの呼吸で寝ていたから

驚かない


寅さんの曲を流して頭のマッサージをしたらいつものように気持ち良さそうに目を閉じた父

ただ、すごく眠たそうに寝ていたから、なんとか起こして孫の最新動画を4本見せたら、じっと観ていた

独身の私と姉

弟だけが唯一結婚して孫を二人、父にプレゼントしてくれた


延命治療の最大の目的は

二人目の孫の誕生だった

初めての男の子

しかも父に似ている

至上の喜びを感じていたはず


孫の存在が一番の薬だった

声も出せなくなっていた父が、孫たちが病室に来たら「あー。」と声を振り絞っていた。

去年の夏、今年の正月

二回しか会わせてやれなかった

弟は遠方の病院の勤務医だから当直などで多忙だから


看護師さんが来た

さっきと同じ説明を聞く

当直医も入って来た

そこで死亡確認

4月21日午前1時ちょうど


亡くなると病院から早めに出るように言われるのは知っていた

葬儀屋に電話して父の遺体を運ぶ時間を教えて欲しいと言われ、母とパニクる


とりあえず自宅に帰る

パソコンで検索し、市内でも大きいホールに電話して予約を取った


そこからは怒涛のようなお通夜の準備が始まった




とても広くてホテルのような個室だった
多分、病院長が父の医大の後輩だから特別にこの部屋に一年以上もいさせてくれた
他の一般的な部屋代しか払っていないのに
感謝しかない
歌謡曲や孫の動画、テレビやラジオを好きな時に楽しめたから