このお話は2014年、おかか28歳、長男マオ9歳、次男シキ4歳で、三男サクちゃんを出産した時のお話です★
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2014年7月17日
サクちゃん生後15日目
午前3時、サクちゃんの泣き声で目を覚ましたおかかは、のそのそと起き上がり、枕元にある収納ボックスから新生児用の小さな紙おむつを取り出し、バタバタと動くサクちゃんの脚を避ける様に産着の股のボタンを外します。
ズキズキズキズキ・・・・・・・
頭の中で、小さく、痛みの余韻が主張しています。
薬が良く効いたみたいで、頭が爆発してしまうと思う程の痛みはもう無くなっていました。
しかし、今も残っている小さな痛みの余韻が、夢で見た思議な場所を思い出させます。
――――――――――あの場所は何だったのか。
―――――――あの時、私は確かにあそこに居た。
サクちゃんを抱き上げ、乳首に保護器を装着し、口に含ませます。
直母の練習をする気には・・・・なれませんでした。
それよりも、私は必死に夢で見た場所を思い出していました。
――――――もう一度、あの場所に行きたい。
あんな場所があったことを、あの場所で感じた感覚を、忘れたくないと、強く思いました。
保護器の中に僅かに溜まっている乳白色の母乳。
必死に保護器を吸うサクちゃん。
「・・・・次のおっぱいの時間はちゃんと練習するね・・・。」
そうサクちゃんに語り掛けましたが、何故だかこの瞬間
『いや、もう直母の練習はしないかもしれない。』という気持ちが湧いてきました。
慌てて考えを訂正します。
いやいやいや、今まで頑張って来たんだから、休憩するのは今回だけにして、次からはまたちゃんとやらないと!
サクちゃんだって混乱するし、母乳も出なくなっちゃう!
今は頭痛が残ってるからやらないだけ!次からはちゃんとする!
うんうん。と、自分に言い聞かせ、早々にミルクを作り飲ませてから、また追加の頭痛薬を飲んで眠りにつきました。
――――――そして朝、バタバタと仕事に行く用意をするマーシーの姿を眺めながら、何とも言えない切ない気持ちに浸ります。
ベッドに寝ころんだまま「マーシーにおんぶされてる夢を見たんだ。」と、言うと。
「ふぅん。」と興味なさそうにマーシーは返事をします。
「凄く綺麗な海の上を、マーシーにおんぶされてジャンプしてた。」
「へー。」
もしかしたらマーシーも、あの時、あの場所に居たんじゃないか?と思ったおかかですが
マーシーの反応的に、それは無い様でした。
―――――やっぱり、ただの夢だったのか。
あれは、精神的、肉体的に限界を迎えたおかかに、おかかの脳が自己治療みたいな感じで作り上げた世界だったのかもしれません。
でも夢とは思えない程、全てがリアルに感じられたのです。
体の感覚があるのに、シャボン玉のように軽い感覚・・・とか。
あの時吹いていた風の温度、風の感触、風が身体を吹き抜けていく時のくすぐったい様な感覚・・・とか。
マーシーの背中から感じる存在感と、温かさ、匂い・・・とか。
全てが現実より、現実的に思えました。
今まで、沢山の夢を見てきましたが、こんな体験は初めてだったので、おかかはあれがただの〝夢〟だと、片づけたくありませんでした。
「マーシーさぁ、白いシャツ着てた。なんかマーシーさぁ・・・・。」
出発する時間が迫っているのか、バタバタと目の前を行き来する―マーシーにおかかは話を続けますが、
「頭痛治ったの?」と、
マーシーは夢の話には興味が無いらしく、私もここで話すのを辞めました。
「・・・痛いけど、めっちゃ痛いのは治った。本当、何だったんだろう・・・。本気で頭割れるかと思ったー・・・・。」
「ふぅん。じゃ、行ってくるわ。」
「んー。」
マーシーはいつも通りのマーシーで、でも、夢で見たマーシーも、確かにマーシーでした。
私は、無宗教だし、生まれ変わりや輪廻転生の事はよくわかりませんが、この時初めて、初めてマーシーに会った時に感じた『あれ?この人知ってる気がする。何でだ?』に、答えが出たような気がしました。
どうゆう答え?と聞かれても全く上手に説明できませんが、自分にとってマーシーは〝旦那〟という存在だけではなく、もっともっと大きな意味でずっとそばに居た存在だったという事と、いつもいつも、私を助け、そして見守っていた人だったという事を〝思い出した〟感覚になった時、『あぁなるほどそうだったのかー。』と、凄く納得しました。
前世があり、輪廻転生があるのだとしたら、マーシーは前の時も、その前の時も、私の傍で私を助け見守っていたんだと思います。それが夫婦だったのか、兄弟だったのか、親子だったのか、飼い主とペットだったのかは分かりませんが、マーシーは常に助ける・見守る側で、私は常に助けられる・見守られる側だったんだと理解しました。
――――――マーシーめ。そんなにいい奴だったとは。
もう少し、感謝して生きないといけないな・・・。と思いました。
全ては私の脳みそが作り上げた妄想の世界に、私が意味を付けただけかもしれませんが、それでも今の私にとっては大きな救いの意味を持つ体験でした。
―――――――――――その直後、地獄に突き落とされた様な頭痛に襲われる。というオチが付いていたところが難点ですが・・・・。
〝大丈夫〟〝全部大丈夫〟と、全てがそう言っていた事が忘れられません。
朝になり、子供たちが起きてきて、朝ご飯を食べさせます。
「ママ頭痛いから横になってるねー。」と、マオとシキちゃんが朝ご飯を食べてる横でゴロンと寝転がります。
二人は「ん?最近はずっと寝転がってるじゃん。敢えて宣言しなくても・・・。」という顔をして、ご飯を食べ始めます。
もうすぐサクちゃんの授乳の時間です。
一回、直母の練習をサボってしまったので、次は、次こそはちゃんとしなくてはいけません。
頭痛薬も良く効いています。
大丈夫、できる!大丈夫!
そしてサクちゃんが起き、オムツを替えます。
「サクちゃん、頑張ろうね。」
――――そう言いながら、自分に頑張る気が湧いてこない事に気づきました。
やりたくない、逃げたい。という気持ちもありません。ただ、『いや、もうやらない気がする』と、思ったのです。
おかかは再び考えを改めようと一旦深呼吸しました。
やる気があろうが無かろうが、そんなことは関係ありません。
今まで辞めたい辞めたいと思いながらも、でも母乳で育てる日を夢見て必死にやってきたのです。
だからまたやるのです。やらなければならないのです。
一生懸命唇を尖らせて、はふはふと乳首を探すサクちゃんを抱き上げ、授乳用キャミソールの胸元を開きました。
いつの日かきっと叶う母乳育児の日を夢見て、一歩一歩、確実に、誠実に、とにかく、とにかく、やるべきことを、やるんだ!!
―――と、ぐっと下を向いた瞬間・・・・。
ブチッ・・・・
という音と衝撃の後
ビキビキビキビキー--!!
と、首筋から後頭部にかけて電流の様な物が走り
そして・・・・
グァンガンガンガン!!
と、再び夜中に起きた頭痛と同じ頭痛が始まりました・・・・。
視界が白と黒に点滅したようになり、『これはヤバい!!』と判断し、痛みに悶えながらも、サクちゃんを布団に下ろしました。
おっぱいをもらえると思っていたのに布団に下ろされたサクちゃんはピギャー!っと泣きますが
おかかはそれどころではありません。再び頭の中でお寺の金がゴンゴンガンガンと鳴っているのです。
死ぬ・・・・死んでしまう・・・・・。
大人しく頭を抱えて蹲り、痛みが小さくなるのを待つしかありません。
しかし、ここでマオがサクちゃんが放置されているのに気付き、声をかけて来ました。
「ママ、どーしたん?」
目線だけをマオに向けて答えます。
「マオ・・・ミルク作って・・・・・・。」
マオは戸惑っていました。
サクちゃんが退院してからずっと、サクちゃんのおっぱいやミルクに関することはおかかが張り詰めた雰囲気を漂わせながら行っていたので、マオがサクちゃんの授乳に関与することは無かったからです。
「マオ・・・お願いミルク・・・・分かるでしょ作り方・・・・作ってきて・・・・。お願い・・・・。」
ガンガンゴンゴンと鳴り続ける頭を抱えて必死で訴えると、マオは「オッケー♪」と言ってキッチンの方へ走って行きました。
――――――
―――
「頭気をつけて・・・。頭下げないように・・・。」
「分かってる♪」
大丈夫なような、大丈夫じゃないような手つきでサクちゃんを抱き上げるマオに、ハラハラしながらも、少しでも動くと頭痛が酷くなりそうで起き上がる事が出来ません。
〝あぁ・・・もうちょっと哺乳瓶の角度を上げないと飲み辛そう・・・。〟
〝サクちゃんの腕はどうなってる?痛くないかな・・・〟
と、言いたいことはいっぱいあるのに、頭痛がそれを許しません。
しばらくすると、少しずつ痛みの大きさが小さくなってギュッと力を入れていた顔と身体を緩めることが出来るようになりました。
――――――――良かった。このまま頭が爆発するかと思った・・・。
しかし、これで二回目です。
夜中に、夢から〝落ちた〟時と、今。
短い時間に二度も激やば級の頭痛に襲われた訳ですが、二度目にして、その原因が
分かりました。
頭痛の原因は、〝下を向きすぎている事〟に間違いありません。
サクちゃんが生まれてから、この15日間おかかはずっと下を向いていました。
一日何時間も、下を向いて、おっぱいを絞り続けていました。
直母の練習も、搾乳も、ずっとずっと下を向いて、ひたすらにおっぱいをこねくり回していました。
その結果、首が限界を迎えたのです。
そして・・・・
なるほど、そうかー。そりゃそうだよなぁ・・・・。と、納得した瞬間、
〝――――――――――――――これ、もう無理って事じゃない?〟
という言葉が、ポンっと浮かびました。
「・・・・・・・・・・。」
そして思いました。
うん。無理だ。
下を向かずに直母の練習なんて出来るはずがありません。
この先、下を向くだけで、こんな頭痛に襲われてしまうのでは、直母の練習どころか、子供を育てていくこと自体、無理です。
「・・・・・・・・・・・。」
そしておかかは呟きます。
「もう・・・やめだ・・・・。」
すると、おかかかの中おかかが飛び出し、叫びました。
「やめだやめだやめだやめだやめだー---!!」
そしておかかは起き上がり、叫びました。
「もぉぉぉぉ母乳やめだぁぁぁぁ~!!!!」
「うぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」
泣いていました。
辞めると自分で叫んで、安心したのか、悲しいのか、嬉しいのか、辛いのか、
どれが本当の気持ちなのか分かりませんが、全部の気持ちが混ざっていました。
もうやめる。もう決めた。もうやめる。
ぎぁぁぁぁぁぁぁ~!!
絶叫して泣きわめくと、再び頭痛が強さを増し、悶絶・・・・。
―――――――――――こうして頭痛がきっかけとなり、母乳育児を諦めると決断したおかかですが、葛藤は続きます。
次回へつづく★お楽しみに
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最後まで読んでいただきありがとうございます★
次回も是非、読んでやってくださーい♪
★おかか★
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