しわいマラソン88キロを制限時間内に完走した。
公式記録:12時間54分05秒
制限時間まで5分55秒というギリギリゴールだった。
満足。
とてつもなく面白い一日だった。
スタートは午前5時半。
前夜は度々目を覚まし、熟睡できず状態。
午前4時に起きて、買っておいたパンを宿で食べて出発。
まだ暗く、寒い。
多分気温は10度あるかないか、だっただろうと思う。
温井ダムの上では篝火が燃えていて、その火で暖を取っているランナー、応援の方々多数。
関門通過&タイムチェック用のリストバンドを左腕に巻いてもらって、寒さしのぎにストレッチをのんびりしている内に、「パン」と合図が何気なくあってスタート。
後方でゆっくり走り出す。
最初から登り坂が暫く続く。
気温低く、指先が冷たい。
身体が温まっていないので、ゆるゆる登る。
空が明けていくのがとても綺麗。
少しづつ身体が温まってきて、2キロぐらいで脚が回りだす。
心肺脚、調子良さそうだ。
山間の林間を進む。
とても気持ちがいい。
途中砂利の山道があり、これが面白い。
この砂利道を走っている時、足の裏で走る、ってこういうことなんだな、って何となく実感する。
舗装道路にはない不安定さをカバーするためには、足の裏で地面を押すようにしないと、バランスを崩してしまう。
足は前へ進めるのではなく、地面を押すようにして走れば、落ち着いて走っていることができる。
砂利道を抜けると豚舎があって、豚舎の子豚さんたちを眺めながら走る。
その向こうは、林間を抜けている間に登ったお日様に照らされている稲穂の垂れた田圃を見ながらの道だ。
朝早いのに、沿道のあちらこちらで応援の声をかけてくださる方たちがいる。
最初は声が出なかったのだけど、その内「お早うございまぁす!」と言いながら駆けすぎることができるようになった。
(なんせ、沿道の方たち、出場者名の載った大会パンフを皆さん持っていらして、「XX番の○○さぁん~!頑張ってくださいねぇ!!」と名前を呼んで応援して下さるのだ。これには応えねば失礼よね。)
足は小刻みに動かし、8k/hを保つようにした。
深入山のエイドステーションでトイレ休憩&バナナを口に入れる。
この大会、エイドステーションは充実していたな。
ステーションのボランティアの方々が皆親切で、遊びで走っている我々を励ましてくれたり、応援してくれたりで、頭が下がる思いだ。
トイレ休憩で少し時間ロスをしたので、スピードを上げ、8k/hペースに戻す。
が、実は、ペースを自分の思い通りにできたのは、ここまで。(凡そ30km地点)
それでも、ここから餅の木、内黒峠(今回のコース標高最高値地点、約45km地点)までは、ペース維持はできていた。
長い長い内黒峠登坂が終わって、やれやれ下りだ、飛ばすぞぉ~と思ったものの、前腿、膝が笑い出す。
脚のコントロールが利かなくなりだしていることを自覚。
さぁ、どう脚を制御しよう?
後40キロ以上走るのだが、私の脚、持つだろうか?
幸い心肺は全く苦しみを感じていない。ものすごく楽に呼吸できている。
この先、問題が発生するとしたら、前腿、膝だ。
登りよりも、下りのほうが怖い。
私の場合、脚の筋肉をより酷使するのは、下り坂の方らしい。
スピードが徐々に落ち出している。
時間は午前11時半ごろ、空腹を感じ出す。
なんだか力が脚に入らない。
これが「シャリバテ」ってやつかぁ。
エイドまでまだすこしありそうだったので、持っていたペットシュガー(沖縄のキビ砂糖のやつ)を口に流し込む。
これは良いよぉ。
即効性のある元気付けだ。
内黒峠を下りきった所のエイドステーションで、お握りをいただく。
ものすごく美味しい。
そこからまた登りなのだけど、お握りのおかげで脚がまた上がり出す。
第一関門(約52km地点)の三段峡入り口まで到達。
家人が待っていてくれた。
大丈夫か?無理せずリタイアしたら??
などと不埒なことを言うので、平気平気、と応えたものの、実は脚がこの先持つかがかなり不安ではあった。
アンパン、水、氷をいただいて、トイレ(脚、トイレでしゃがむのが、既にかなりきつい状態であった)をして、家人にバイバイして走り出す。
ここからの10キロぐらい、日差しが強くなって気温(30度以上になっていたそうだ)が上がり、かつ、車道脇の日陰のない道を行くので、脚以外には苦痛を感じていなかった身体が急激にバテだした。
それまで、ちゃんと真っ直ぐ立てていた上半身が、前屈みがちになり、呼吸が浅くなりだした。
それに、車道は退屈だ。
林間なら、樹や虫や鳥や水や草に目をやって、楽しむことも自在なのだけど。
取りあえず、前へ!と思うしかない区間だった。
龍頭峡に入る。
ここが第二関門なんだが、行けども行けども関門に到達しない。
関門までの2kmは登坂。
林間道だったので日差しは遮られて涼しく、水音の側を行くことができて救われたものの、このコースの中で、私にとっては最も過酷な「しわい」区間が、この三段峡から龍頭峡第二関門だった。
第二関門でチェックを受け、来た道を折り返す。
コースの中で唯一、行き来するランナーが顔を合わせて「ファイト!」とか「がんば!」とか、声を掛け合える区間でもある。
余裕のあるランナーさんももちろんいるが、ヨレヨレランナーも多数。
私もヨレヨレなんだろうなぁ。
私の脚全く上がっていないもの。
龍頭峡を下ったところで、登坂コースに入る。
これが最後の登坂でありますように。
と祈りながら登る。
登りきって前方が開けると、そこは棚田。
棚田の稲は刈り取られていたが、段々になった田圃がずっと下まで続いていて、あまりの美しい光景に見惚れてしまう。
田植えの時期、稲穂の時期、ここはどれほど美しい風景なのだろうか。
と、目はうっとりなのだが、見惚れる程の棚田である。
その分、下りがきつい、ってことなのだ。
この下りがどれ程きついか、体感する前に、のんびりと棚田を眺めながら、エイドで棚田で収穫した新米のお握りをいただく。
これが美味。
さあ、下りだもんね。
実質的なきつい登りはもうないはず。
ここからはスピードを上げなきゃなぁ。
なぁんて思いながら、棚田を下りだしたら、脚が言うことを聞いてくれない。
膝が笑って、全く制御できない。
田圃から田圃への段々の傾斜角度がきついのだ。
歩くより鈍いスピードでのろのろ降る。
そこから先は、平坦道でも、脚が動かない。
もう駄目かもな。次のエイドで、リタイア宣言しようかな。。。
そうここで初めて思う。
が、
10キロをきりましたよ!完走してくださいね!!
と、次のエイドで励まされて、
そうだ、完走だけはしよう。。。
と気を取り直して第三関門に向かう。
人間、励まされると、その気になるものである。
第三関門(加計、約83地点)。
17時前に到達。後最終制限時間までに1時間半はある。
何とか制限時間内完走はできるかなぁ。
などとエイドで、鯛焼きをかじりながら思う。
(この鯛焼き、加計の鯛焼き屋さんの鯛焼きだろうと思うのだが、皮がカリッとしていて、餡子が程好く甘い粒餡で、私好み。)
第三関門を気分だけは気楽になりながら走り出したものの、そこから半キロ、行くか行かないかで、急速に失速
する。
平坦なのに、全く脚が動かない。
止まるな、動け。ここで止まったら、もう動けないぞ。
と脚に言い聞かせて、猛烈な遅さで歩く。
2キロを50分掛けて進む。
残り3キロぐらいになった時、脚が少し動くようになる。
歩くことは治癒なのだね。
その時、時刻は17時50分。
後3キロ。
その中には、ダムに登る上り階段がある。
あの階段を、この脚で駆け上がるのは無理だ。
階段上りは、この脚だと、おそらく5分から10分掛かる。
残り40分で3キロ行くためには。。。。。
階段上りに費やすであろう10分を差し引くと、30分で3キロ。
6k/h以上のスピードで走らなきゃ駄目じゃない!!
(6k/hを「走る」、ってカテゴリーに入れちゃうところが、もう心理的にも焼が回っているってことよね。)
走る、と言うにはおこがましいスピードながら、ともかく走り出す。
呼吸はもう乱れ乱れ、脚はヨタヨタ。
それでも10分弱で1キロ進む。
ついに、温井ダムの階段に到達。
最初の段に脚をかけようとして、つまずく。
係りの方に、大丈夫ですか?、と声を掛けられたが、もうこうなれば上がるしかないのだ。
大丈夫です。
とゼイゼイいいながら、上る。
上る、って言っても、脚ではもう上れないので、手すりにしがみ付いて、腕で上る。
200段程上ったら、係りの方が、
後半分で上りきりますよ。これが最後の給水です。
と言って水を渡してくれた。
有難い。呼吸が少し楽になる。
(なんか、天国への階段途中で末期の水を飲ませてもらったような気がしないでもない。)
上りきっても、ゴールまで後1キロある。
ってところが、いかにも「しわい」である。
ダムに上がってよろよろ進んでいると、沿道から、走り終えたランナーさんの一人が、
後10分!
と声を掛けてくれて、はっとする。
走らなきゃ。制限時間には間に合わせるんだもん。
と走り出したが、傍目からは歩いているようにしか見えなかったろうな。
薄暗く成り始めた中、ゴールの会場へ上っていく。
(これがほんとに最後の登坂だ。)
ゴール設営会場のある丘の中腹で、待っていてくれた家人が手を振ってくれたので、手を振りかえす。
ものすごくホッとすると同時に元気が出て坂道をコース後半では一番スピードを上げて走る。
最終計測をして、最後の制限時間の関門通過。
やれやれ終わった。と思ったら、フィニッシュゲートは、その10メートルぐらい先。
フィニッシュしてください。
と係りの方に言われて、おぉ、まだ残っていたか、とフィニッシュテープまでヨロヨロ走って、それで本当にお終い。
フィニッシュ後の私の第一声。
あぁ面白かった!
今までで一番面白い一日であったことは確かだな。
大会を支えた全ての方々(実行委員の方々、ボランティアの方々、沿道から応援してくださった方々、ランナーの皆さん、子豚ちゃん、蛇(3匹も見た)、虫、イタチ(道路を横切るのを見た)、家人、皆)感謝します。
追加の呟き:
今、前腿、膝回りが、すっごい筋肉痛なんだよね。
明日、営業自転車、乗れるかなぁ。