ミラー! (716)広報室にて | 超自己満足的自己表現

ミラー! (716)広報室にて

 僕の職場、司令部広報室。半分以上の部下が外へ出て静かだ。事務所にいた部下が、僕と美里へお茶を出す。応接セットの机には食べ物やらおつまみ系、そしてお酒まで置いてある。まあ、僕と美里は飲まないけれど、美里をソファーへ座らせて、僕はデスク横のロッカーからハンガーを出し、礼装の上着から礼装用の階級章をはずし、ハンガーへかけ、ロッカーへ。そして美里のいるソファーへ腰かける。美里は、美希にミルクを与えている。母乳とミルクの混合。外出時はミルクにしている美里。美希はおいしそうにミルクを飲み干す。そしておしめを替えると美希はすぐに眠る。ほんと扱いやすそうだ。



「美里、ほんと美希っていい子だね。」

「え?家じゃよく泣くのよ。こっち来ておとなしくしてくれて助かるけど…。」

「美里、これ食べたら?僕も、あまり食べてないから…。」



と言って紙皿へ美里の分と僕の分を取り分ける。ほんと記念会食中は食べてないに近い。だからホッとした途端お腹がなった。そのお腹の音に気がついたのか、美里が苦笑した。



「春希さん、今晩はおいしいもの作って待ってるね。もう、下準備してあるの。楽しみにしていてね。」



と微笑む。なんだろう。ビーフシチューが食べたいなあ…なんて思ったり…。



美里といろいろ話しながら、食べていると、電話がなる。もちろん部下が電話を取り、応対。



「室長は…在室されていますが…奥様とご一緒でして…。え!?了解です!



と慌てた様子で電話を切った。



「何かあったの?



応対した部下が、ささっと応接セットあたりを片づけながらこう言った。



「今から司令がこちらに。5分後です。」



?司令が?




ま、たまにこちらへ来られることはあるけど…。



僕はロッカーから上着を取り出し、着る。え?といった表情の美里。すると5分もしないうちに司令が登場。奥さまもいらっしゃるようだ。うちの司令は副師団長もされている陸将補。3佐の僕から見ても随分上の人だ。在室している部下たちは皆直立不動。もちろん僕も。



「ずいぶん探したよ。遠藤君。」

「はい。この私に何かご用でしょうか?

「奥さんがこられていると聞いたのでね…。」

「家内ですか…?



なんか話に聞くと、司令の奥様が美里のファンらしく、是非会いたいということらしい…。もちろん僕は美里を司令とその奥様へ紹介する。



「家内の美里です。立花真里菜と申した方がお分かりだと思いますが…。そして今眠っていますが、先月生まれました次女の美希です。」



ソファーの上座に司令と奥様に座っていただき、下座に僕と美里が座る。部下が出したお茶を飲みながら緊張しつつ歓談。もちろん美里の話で盛り上がる。



「美里さん、私は東京に住んでいるので、また機会があればお会いしましょうね。」



と、司令の奥様。もちろん美里はうちの南麻布の自宅へおいでくださいと話している。奥さん同士仲良くすることはいいことだ。将官の奥さんと佐官の奥さんだけどさ…。



 司令ご夫婦は、帰宅されるようで、僕と美里で、司令部正面玄関までお見送り。ほんと緊張する…。



「司令ご夫婦ってとてもいい方ね。」



と美里は僕を見て微笑む。ほんと司令はとてもいい方だ。まるで元統幕長であった僕の大叔父さんのような人。もちろん何かと僕のことを可愛がってくださっている。そして司令部で顔を合わすと色々声をかけてくださる。意に沿わない司令部広報室の仕事だけれど、いい人に恵まれてよかったと思う。



さて、記念行事が終わったし、来週に行われる神戸でのイベントをがんばらないとね…。