ミラー! (712)記念行事予行
妻と子供たちが突然やってきた次の日。所属駐屯地の記念行事前日。いわゆる総合予行日。開始時間にイベントが行われるグランド前で妻や子供たちと待ち合わせ。未来と美紅が手をつなぎ、そして美里がベビーカーを押しながら楽しそうにやってきた。僕の姿に気が付いた未来と美紅は競争するように僕のところへ走ってきた。
「パパ!」
「パパ!」
そう言って二人で僕へ飛びついた。遅れてやってくる美里。
「春希さんの仕事は?」
「部下に任せてきた。何かあれば携帯へ連絡入るから、ゆっくりできるよ。」
美里は、そう?といって微笑む。
「そういや春希さん。」
「何?」
「ここって夏祭りの時来たわよね?」
そういやそうだ。それもまだ結婚前で、付き合っていることを秘密にしていて、色々やり取りをして困った記憶がある。あれから2年近く。早いよね。
「あ!戦車!」
と、未来が指をさした。すごいすごいといいながら、大きな74式戦車を眺めている。確か試乗で来たはずなんだけど…まだ試乗時間じゃない。身長制限があるけれど大丈夫かな?
「美紅は乗りたい?」
すると美紅は首を横に振った。あまり興味がないようで、眠っている妹のほっぺばかり触ったり軽くつついたりしている。
「春希さん、未来だけ乗せてあげたら?」
「そうしようか…。美紅は興味ないみたいだし…。」
いろいろイベントを楽しんだあと、戦車試乗受付時間が始まったみたいで、きちんと列へ並ぶ。そして整理券をもらう。身長はぎりぎり大丈夫みたいだけど、ちょっと小さいので、保護者同伴ということになった。
ということで僕が一緒に乗る。実は…はじめてだったりして。職種が違うし。ああ、作業服にすればよかったな…。誰に会うかわからないから常装制服だった。これでも一応広報室長。整理券の時間が来て並ぶ。とてもうれしそうな未来。僕の手をぎゅっと握って順番を待っていた。
「あ、遠藤3佐。これから試乗ですか?」
と、駐屯地広報担当陸曹がカメラを持ちながら声をかけてきた。予行の様子を写真へ納めていたみたいだ。
「あれ?息子さんですか?じゃあ、奥さまもご一緒ですか?」
「ま、まあね…。」
「じゃあ、あとからサイン貰っていいですか?自分の家内、奥さんのファンなんですよね。」
「あ、どうだろう…いいとは思うけど。」
そして記念にと1枚写真を撮ってもらった。
やっと順番が回ってきて、戦車へ試乗。未来はエンジンの音とにおい、そして振動に驚きながら楽しんでいた。