ミラー! (708)祖母宅へ
神戸でのイベント打ち合わせを終え、そのまま芦屋のお祖母ちゃんちへ直行。その前に神戸でお祖母ちゃんの大好物を購入。準備万端でお祖母ちゃんに会う。時間は夕方6時を過ぎている。大きな芦屋のお屋敷の玄関前へ車を止め、制服を整え制帽を手に持つ。
「こんばんは。お祖母ちゃん。元気?」
と、玄関まで出迎えてくれたお祖母ちゃんに挨拶して、家政婦さんへお土産を手渡す。相変わらず元気そうなお祖母ちゃんで安心した。
6月に衆議院選挙が控えているからね。余計に元気だ。もちろん僕の兄が大叔父さんの跡継ぎとして出馬するんだよね。そのことで兄はとても忙しい。代々弐條後援会も引き継ぐので、週末はいつも後援会関係で忙しいと聞く。妻である雅美も子供を預けて走り回っている。こういうことは妻の支えが大切だからねぇ…。養母がちょうどいい機会だからと美里に口うるさく言っているのも知っている。選挙前だから、僕の実家もホントピリピリしている。
「春希、夕飯食べて行きなさいね。」
とお祖母ちゃんがニコニコ顔で、家政婦さんとともにキッチンへ立っている。リビングではベビーシッターさんが、春斗と雅美の子供たちの面倒を見ていた。僕の姿に気が付く玲奈ちゃん。いつもと違う制服姿だけど、大喜びで僕へ飛びつく。
「春希おじタン。」
「久しぶりだね玲奈ちゃん。どう?学校。楽しい?」
「うん。楽しいよ。」
と、軽い自閉症を持つ玲奈ちゃんは微笑む。学習能力が少し遅れている。でもピアノの才能は世界レベルらしいので、今通っている学校は私学小学校音楽部に所属しながら特別学級なのだけれど…。
玲奈ちゃんは僕へのあいさつを済ませた後、リビングにおいてあるグランドピアノで曲を弾き出した。ほんといつ聴いても上手い。お祖母ちゃんのその音色に惚れ惚れしている。そしていつも『障害がなければ、将来楽しみなのにねぇ…』というのだ。
玲奈ちゃんのピアノの音色を聴きながら玲奈ちゃんの弟、瑞貴君をだっこさせてもらう。玲奈ちゃんと違って元気な赤ちゃん。生後半年。お座りもしっかりして僕があやすとキャッキャと笑う。雅美に似ているのかな?というか亡くなったお爺ちゃん。まさしく源家系の顔立ちだ。
「ただいま!あ、春希来てるんか?」
と、兄と雅美が帰ってきた。
「玄関前の駐車場に僕の車があるからわかってるでしょ?前々から言ってたし。」
「ま、そうやけど。制服で来たんか?」
「神戸でイベントの打ち合わせがあってね。その帰りに寄った。」
「ふーん。忙しいなあ…師団広報室長も。」
と、春斗と話していると雅美が着替えとハンガーを持ってきた。
「春希、これ着て帰れ。俺のやけどサイズ一緒やし。今度返してくれたらええから。」
と、着替えを貸してくれた。
ミラーツインで体形が全く一緒だから同じサイズなんだよね。僕はありがとうと言って春斗の服を借りて着替えた。
着替え終わると再びリビング。ダイニングでは夕飯の準備が整っていた。疲れているのに夕飯準備を手伝っている春斗と雅美。芦屋へ越してきてほんと落ち着いたんだろうね…二人とも。玲奈ちゃんもとても落ち着いているみたいだし。安心した。