ミラー! (699)4人のパパ | 超自己満足的自己表現

ミラー! (699)4人のパパ

 朝、早めに子供たちを起こして、朝食を食べさせる。そして僕だけ病院へ。子供たちは実父の車で手術予定時刻に来ることになっている。



「パパ。美紅ねえ。」



と、まるで僕を足止めするようにいろいろ話しかけてくる。9時に約束していたのに間にあいそうにない…。すると早めに来てくれた実父。子供たちのことをバトンタッチして家を出た。できるだけ急いで着いた病院。約束時間20分過ぎていた。ちょっと機嫌が悪そうな美里だけど、看護師さんのいない時をねらって美里へキスをしたら、いつもの笑顔。しかし手術前だから、不安な表情。大丈夫だからと美里のほほをなでた。



「あと2時間したら美希ちゃんが出てくるんだから。ね?美里。」

「そうよね?美希ちゃんに会えるんだもん。春希さんは傍にいてくれるし…。」

「きっと元気でいい子だよ。何かあったとしても傍に僕がいるし。先生もいい人つけてくれるって。だから安心して。ね?」

「うん。そうだね。未来の時は、こういう時間に未来のお父さんはいなかったけれど、美希は違うもんね。」



すると僕は美里の耳元でこうつぶやく。



「あのさ、そういえば、僕、未来の時、手術に立ち会ってたよね。」

「え?」



美里は気付かなかったみたいだ。未来が生まれる時、未来は心臓に持病があるとわかっていたから、小児科医として側にいて、未来が出てくるのを待ち構えていた。だから立ち会ったことになるのかな?



「そっか…。未来も…。」



といって美里は瞳を潤ませる。ま、あの時、僕は君だと気がつかなかったわけなんだけど…。



 準備の時間がやってきて、麻酔用の注射や点滴がつけられる。美里は手術着に着替えて、準備。その時間に看護師さんにあとのことを頼んで、僕は手術室の方へ。立ち会うんだから、きちんとした格好と消毒をしないといけない。手術室の前で、美里の主治医である執刀医と担当の看護師にあいさつ。着替えて念入りに消毒をする。



「あ、遠藤君。」

「はい。」

「君は赤ちゃんのへその緒を切ってあげなさい。」

「は、はい!」



もちろん僕は見ているだけと思った。へその緒を切ってだっこしてもいいよとも言われた。生まれたばかりのわが子を抱けるんだね。とても楽しみだ。



 手術が始まる。下半身麻酔をかけられ、執刀。2回目の帝王切開なので、癒着とかが心配されたけれど、あまり心配はなくすんなりと進んだ。そしておなかから赤ちゃんが取り出され、僕はへその緒を切ってそしてその後の処置。そしてタオルにくるまれた美希をだっこして美里に見せた。



「ほら、美里。可愛い娘だよ。美里に似てるよね。とても…。」

「うん。ありがとう…春希さん。」



僕は美希を看護師に預け、美里のそばに寄り添う。ほんと元気な女の子らしい産声。これで僕は4人のお父さんになった。これから頑張らないといけない。そう感じた日だった。