ミラー! (697)帰省
転属後のひと月が過ぎ、やっと春季休暇による帰省。転属前なら1週間も休暇なんてもらえなかったし、帰省もできづらかった。やっと帰ることができる。
最終の飛行機に乗って、東京へ。タクシーで急いで自宅へ戻る。今日は3月31日。明日、美里は手術のために入院する。そして未来も、同じ日に検査入院。急いで帰ってきた理由もそこにある。朝1番に大学病院入り。どうしても付き添いたかった。未来の検査入院も、美里が入院中に予約を入れたしね。
入院準備万端の美里。後片付けとかが大変だからと今日はお隣の遠藤家でお世話になる。その美里のために、今日は実父や妹夫婦とその家族がやってきてプチパーティー。春斗は6月に行われる選挙のために忙しい。パーティー中、嬉しそうに二日後に生まれてくる娘のいるおなかをさすっている。そして同じように美紅がうれしそうにさする。
「早く会いたいな…美紅の妹。美希ちゃんに早く会いたいな…。ね?ママ。」
「そうね。あと2回寝たら会えるわよ。ほんと楽しみよね。」
未来は、大好きなママを盗られた気分で最近ご機嫌斜めらしい。その未来を僕が相手をする。優希はこの春から6年生のお兄ちゃんだから平然とご飯を食べていた。
「なぁ、春希。2日は国会があるから行けないぞ。」
とお父さん。もちろんそれは承知している。無理に来てほしいとは言わない。初めの子じゃないし、もう4人目。陽菜のところを入れて孫6人。といっても僕は養子だけど…。
「きっと美里さんと春希の子供だから、可愛いんでしょうね。とても楽しみよ。」
とお母さん。身内で一番楽しみにしているのかもしれない。あれこれ生まれてくる美希のために買いそろえていると美里から聞いた。
「春希。生まれた子を、うちのブランドのモデルにしないか?」
って、ほんと爺馬鹿な父さん。まだ生まれてもいない孫をモデルって…。まあ、ベビーブランドがあるのも確かだけど…。みんな好き勝手に産まれてくる娘について話している。
「春希さん。私この子が女優になりたいって言ったら、応援したいの。私、中途半端に女優をしていたから、この子には私の分まで頑張ってほしいの…。例えば…宝塚へ入れるとか…。」
「宝塚?歌劇団?」
「そう…ずっと小さいころから憧れてたのよね。宝塚。モデルスカウトされていなかったら受けてたと思う。だから私はこの子に夢を託したいの。」
と微笑む。夢を持つことはいいことだけど、まだ早いと思うよ。
楽しい時間を終え、自宅へ戻る。久しぶりに楽しかった。ああ、帰りたくないよね。マジで。