ミラー! (692)送別会
民間病院の診察を済ませ一時帰宅。シャワーを浴びて着替えると、僕がいた中隊の飲み会。僕がメインらしいけれど、数人転属があるし、その飲み会も兼ねている。
美里がいたら、またダサい服着てって叱られそう。ほんと美里がいないとファッションセンスがない。ま、以前美里が選んでくれていたスタイルを思い出して着込んでみた。コートを着て、適当にマフラーを結んでしまうところは僕らしいね…。美里がいれば…キチンと結んでくれるんだけど…。
誰もいない部屋へ行ってきますと声をかけて、歩いてお店へ。お酒が入るわけだし、自転車でも飲酒運転になる。
西門前にある焼肉屋さん前には、当直以外のメンバーがそろっていた。
「遠藤3佐!お疲れ様です。どうでした?民間は?」
「ま、いつも通りの混みようだったよ。」
「お疲れでしょうから、さ、はじめましょう。」
と、部下たちが僕の背中を押す。そして始まる宴会。中隊の中でもムードメーカー的な陸曹が乾杯の音頭。乾杯の後、ぐいぐい飲み干す部下を見ながら、僕はちびちび飲む。僕の中隊以外にも、災害派遣部隊のメンバーもちらほら参加している。もうまったくその任務から外されちゃうんだ…僕。派遣要請が来ても行くことはない。
色々世間話とかをしている部下たちの話に耳を傾けながら、食べていると、ある陸士が同期の陸士と話しているのを耳にする。
「知ってる?如月あやな。公式ブログでえらい事告白したらしいで。」
如月あやなは例の美里の後輩グラドル。
「何々?」
「何でも片思いの人がいて、年上で医者なんだってよ。」
「どこの誰よ?」
「なんかさ…関西らしいで。あとはわからないけどなあ…。」
「如月あやなってむっちゃ可愛いグラドルやん。あんなかわいい子を振るやついるんか?」
「俺ならそっこーOKやし。」
って話している。
もしかして関西の医者って…。僕のことだよね。すると後輩医官が、この僕へ寄ってくる。
「遠藤3佐。あいつらが話しているのって…?」
「え?なんで?関係ないよ。」
「でも3佐。この前突然来てたじゃないですか?あやなちゃん。」
「あれは…うちの奥さんのお使いで…。」
「そうですかあ?3佐結構人気あるんですよね?」
「関係ないよ。第一、僕は既婚者だよ。きっとほかの医者でしょ?もし僕なら自衛官だとかそういうの出ると思うよ。」
といってごまかす。
宴会がお開きになり、ほろ酔い気分で帰宅。帰宅途中なんか視線を感じることがあったけれど、これは気のせいだよねぇと思いながら家へ戻った。僕は彼女を振ったし、関係ないよねぇと思いながら。