ミラー! (682)兄弟そろう年末
大みそか。僕が小さいころ一時住んでいた芦屋のおうち。ここには兄夫婦と子供たち、僕のおばあちゃんが住んでいる。今年は兄夫婦に念願の男の子が生まれたし、僕も久しぶりに休みが取れたので、みんなで集まって新年を迎えることになっている。
数日前から来ている春陽の家族が出迎えてくれた。そして春斗。お祖母ちゃんは少し遅れてやってきた。いまだ海外派遣のことで機嫌が悪いお祖母ちゃん。もう終わったことなのに。
「お祖母ちゃんこんにちは!」
と、うちの子供たちが言うとお祖母ちゃんは微笑む。なんだかんだ言っても、ひ孫たちが可愛い。特に優希は遠藤家の未来の跡取りだから、とてもかわいがる。昔の亡くなった元総理大臣であった曾お爺ちゃんを見ているようだ。ひ孫の春斗をよくかわいがったものだ。跡取りだからって。もちろん未来も僕の子供だって知っているから、かわいがってくれるけれどちょっと違う。
リビングには、瑞貴君を抱いた雅美が出迎えた。ほんとに小さく生まれたのに大きくなっている。
「遠藤、待ってたよ。診てみて、瑞貴のこと。」
「え?僕、瑞貴君の主治医じゃないし。」
「だって、瑞貴の主治医頼りないんだもん。遠藤は優秀な小児科医でしょ?新生児も得意なくせに。」
「優秀じゃないよ。最近あまり医療的なことしてないし。」
「何言っているの?引き抜きの話が絶えないって噂じゃない。」
ま、そうだけど…。色々とオファーが来ているのも確かな話。ちょっと迷ってたりする。仕方がないので、カバンからいつも持っているセットを取り出して手をきちんと消毒して瑞貴君を診察する。少し心雑音が残っていたりするけれど、心配ない。順調順調。ほんと雅美はこの僕を頼りすぎ。出産の時といい今日といい…。
とりあえず兄弟が揃ったので、年越しパーティーの準備。女性たちはお手伝いさんたちとともに準備。僕たち男たちは子守。そういう感じで時間が過ぎて行った。