ミラー! (680)裏切り
旦那様の好意で、第2の立花真里菜といわれるかわいい後輩と一緒に旦那様の自宅で楽しい時間。お互い顔が知れているから、ゆっくりどこかファミレスでってことはできないからちょうどいい。
「久しぶりね、あやなちゃん。どう?仕事。この前のDVD良かったみたいね。」
ほんとかわいい後輩、私よりも10歳若い。うちの事務所一押し売出し中の子。最近は有名な雑誌のグラビアもしているし、来年のビールメーカーキャンペーンガールにも選ばれている将来有望な子なの。今までいろいろ仕事の相談も乗ったし、プライベートのことも…。
「先輩。新婚生活、楽しい?旦那様は単身赴任なんですよね?寂しくない?」
「まあね…寂しいけれど、おなかに旦那様との赤ちゃんがいるから大丈夫。」
色々惚気話までしちゃって…後輩の顔色まで気づかなかった。
「いいな…。でも、旦那様可哀そうですよね。」
「え?どうして?」
「まだ新婚なのに、単身赴任でしょ?なかなか東京へ帰れないし、帰っても先輩は妊娠中で・・・。」
「ま、そうだけど…。」
「旦那様も男性ですよ。浮気されても知りませんよ。」
浮気?そんなこと全然考えてなかった。春希さんに限って浮気なんか。でも…私が未来を妊娠した時は、春希さんには家庭があって、いくらお酒に酔っていたとはいえ、浮気になるわよね?当時の彼からしたら未来は隠し子なんだし。今は性格が変わるほどお酒を飲まないし、控えてるって言ってた。色々考えていると、後輩はため息。
「先輩って、どうやって旦那様を好きにさせたんですか?旦那様の前の奥さんを亡くしてすぐに、先輩と付き合いだしたんですよね?もともと何かあったんじゃないんですか?じゃないとおかしいです。」
未来がいたからって言えないじゃない?
「ちょうど先輩、自衛隊関係の雑誌のグラビアをしましたよね。そこで再会したってことになってますけど。先輩、そこで声をかけたんですか?あと…。」
「あと?」
「なんか以前の先輩と感じが全然違うんですけど。もしかして旦那様の気を引くために整形とかしたんですか?それとも旦那様の前では、猫を被っているとか?演技?」
何言っているの?この子は。以前の私は本当の私じゃないだけ…。化粧とかでごまかしてた。
「整形なんてしてないわ。もちろん旦那様の気を引くために何かを演じているわけではないわ。今の私が私なの。」
「そうなんですか?みんな先輩のこと言ってますよ。旦那様の前の奥さんが事故でなくなったのも、先輩が前の奥さんを恨んでたんじゃないかって。妬んでたんじゃないか?ってだから事故に巻き込まれたんじゃないかって。だって先輩ってそういう人なんですよね。」
「何言っているの?」
「だって、先輩は強運の持ち主なんでしょ?自分の思い通りにできる人なんですよね?」
え・・・?そのようにある占い師さんに言われたこともある。思い通りに運べる人だった。何万人に一人の強運の持ち主だって。もちろん春希さんの亡くなった奥様のことを羨ましいと思ったことがある。でも死んでほしいなんて思ったことはない。死んでもらって後妻になるんだってそんな恐ろしい事考えたことはない…と思うけど。でも心の奥底で思っていたのかもしれない。一時、春希さんと結婚できたらどんなに幸せなんだろうって思ったこともあった。二人の間に生まれた子供はどんなにかわいいんだろうなって…。だから?だから奥さんは交通事故に?そんなことはないよね?きっと。
後輩は大きく息を吸って私に言った。
「先輩。私、先輩の旦那様、タイプなんです。去年の夏に出会って、とても慕っていました。大好きなんです。旦那様をお借りしちゃってもいいですよね?」
「え?何言っているの?冗談でしょ?」
「冗談でないですよ。顔やスタイルは先輩に負けるけど、若さには勝てないですよね。私の実家はここに近いし、ちょくちょく戻ってますから、彼のさみしさを紛らわすことできます。先輩の代わりじゃないですけど…もちろん、先輩から妻の座を奪ったりしません。私、結婚とか子供とか興味ありませんから。好きな人と一緒にいればそれで満足です。ね?いいですよね?せ・ん・ぱ・い。」
後輩の顔はほんと真剣だった。旦那様の家を知りたいから遊びに来たわけ?私は久々に怒った。そして後輩を追い出した。
「もう来ないでくれる?私の大切な旦那様に手を出さないで。」
「じゃ、今度彼に聞いてみます。じゃ、先輩。お元気で。」
といって後輩は立ち去った。
なんなの?あんな子だと思わなかった。今までとてもかわいがっていたのに。そういやずっと好きな人がいるって相談受けていたのは、春希さんのことだったの?ああ、ばかばかしい。何もなければいいけど…。ちょっと心配…。