ミラー! (657)意外な再会
「遠藤先生!」
と、ちょっと遅い昼食を片づけていると声をかけられる。遠藤先生?きょろきょろしていると、また声をかけられる。
「○○病院の遠藤春希先生!」
○○病院とは僕が派遣されて週1回勤務している病院。すると僕が担当している心臓外来の患者さん親子。そういや、2カ月くらい前に相談を受けたっけ。3歳の患者さんで、海外旅行へ行ってもいいかと相談された。まあ重病じゃないし、お薬さえ飲んでいれば大丈夫ですよと言って許可を出した。こんなところで会うなんて思わなかったけど…。
「はるきせんせ~~~~!」
と、かわいい竜馬君という患者君。病院でいつもこの僕の姿を見つけると駆け寄ってくる。今日は迷彩姿なのに、いつものように駆け寄ってきた。
「竜馬君、大丈夫かな?お胸痛くない?」
「うん。大丈夫。先生はなにしているの?」
「先生はね、お仕事でたくさんの患者さんを診ているんだよ。驚いたな…こんなところで会えるなんて。どうしたんですか?」
と僕は竜馬君のお母さんに声をかけてみた。
「本当であればもう日本へ着いているはずだったんですが、この状況で帰ることができなくて…。」
「そうですか…。ご家族の方はご無事ですか?今空港が閉鎖されていますからね…。お薬はありますか?もしかしてきっちりの量しか持ってきていないってことないですか?」
というとお母さんは首を縦に振った。まあ、一日や二日抜いても命に関わることではないけれどよくない。
「ここへ来れば自衛隊医療関係者が到着したからあるかもしれないといわれて来ました。先生にここで会えるなんて思いもしませんでしたが…。」
「薬かあ…。あの薬はリストになかったと思うんだけど…。」
といったけれど、そういや…常時私物の医療鞄の中に未来が遊びに来て薬を忘れたらいけないからと1週間分入れてあることを思い出した。確か同じ処方箋を書いている。この子の分量は少ないけど…。
「ちょっと待ってください。確かカバンに息子の薬があったと思います。同じ病気で、種類も同じですから。」
と言って近くにおいてある医療鞄の中の薬入れを漁った。僕の常備薬のほかに、優希や美紅用の常備薬。そして未来の薬。未来は6歳この子は3歳。体重も半分くらい。このままでは多すぎるので、きちんと量を指示してとりあえず半分の量を手渡した。
「もし帰る目途が立たなくて、なくなりそうであれば、またあと半量を取りに来てください。一応他国の医療チームに同じ成分の薬がないか聞いておきます。早く帰国できるといいですね。」
「ありがとうございます!先生はいつ帰国ですか?」
「最低ひと月ですかね?」
と苦笑。もちろん妻が妊娠中だと知っているから、色々心配されてしまったのは言うまでもない。僕はかわいい患者さんの頭をなでて手を振り別れた。