ミラー! (656)任務開始 | 超自己満足的自己表現

ミラー! (656)任務開始

 税関を通り、預けた荷物を受け取ると、米軍が準備した車両に乗り込む。その後、米軍医療関係部隊ともに、現地へ向かった。ここまでは以前米軍と共同演習した通り。ま、決められた通りに事が運んでいく。



移動中に、米軍の大佐や大尉、まあ言う指揮官クラスと打ち合わせ。その後、陸曹士の部下たちと打ち合わせ内容についての報告と指示をする。到着次第、医官と看護師は現地医療現場へ向かうことになっている。残りのものであとから到着する機材や人員の受け入れ準備をすることになった。



 野営地に到着。簡単な部隊本部を作り、医療用の荷物を準備する。準備が整った後、米軍医官とともに、現地の医療現場へ。ここは日本人も訪れる観光地だからか、ちらほら日本人もいる。やはり思った通り、怪我人に対し、医療関係者が足りない。その上、病人もいる始末。内科チームと外科チームに分かれ、さっそく診察を始めて行った。



僕は小児科医。内科も診ることができるから内科チーム。外科チームに比べてまあ割合は少ないけど…。予想した通りの混乱ぶり。看護師が程度によって患者に札をつけ、診察順番を決めていった。その順番通りに診察を始める。



「隊長、外科が足りないようなので、応援へ行ってきます。」



と、研修医官で同行している内科志望のものが応援にまわるほど、怪我人が多いし、人も足りないようだ。といっても内科も徐々にだけど患者が増えている。不安やストレスによる体調不良。あと衛生面による腹痛とか…。特に子供たちはメンタル面が弱いから、余計に患者が増えている。



ここはフランス領。地元住民やフランス軍医療関係者などもいて、ほんとフランス語が飛び交っている。英語ならなんとかわかる部下たちも、フランス語はチンプンカンプン。フランス人医療関係者に怒鳴られることもしばしば。フランス人は英語を知っていても意地っ張りなのか話そうとしないものもいるしね。ま、フランス語が堪能な僕が、通訳したりしたけど。



「隊長。そろそろ休憩してください。」



と、声をかけてきた部下。そういやここへ着いて何も口にしていない。水程度かなあ…。集中すると食事するのも忘れてしまうこの僕。そのことでよく幹部付准尉や部下たちに叱られたものだ。



休憩交代の医官と交代し、温めてくれていたレーションを食べる。ふと子供を抱いた現地住民に目がいく。美紅や未来くらいの子供かな…。さっきこの子を診たんだ。たいした熱じゃなかったけれど、災害で家をなくして、ゆっくり養生できない。お母さんもほんと疲れた様子で座りこんで子供を抱いている。母親の子供を見る瞳は万国共通。それは以前行った海外派遣でも同じ。そしてふと思い出す亡くなった優奈。そして今身重の美里。二人とも子供を見つめる瞳は、とても温かく、そして愛しかった。