ミラー! (653)発動 | 超自己満足的自己表現

ミラー! (653)発動

 いつものように仕事をこなす。ほんと平和が一番。台風シーズン突入だけど、この僕らの中隊が出動するほどの被害は出ていない。でもいつでも派遣依頼が来てもいいように準備万端。



息抜きにいつもの民間病院勤務。ほんと子供たちの笑顔をみるだけで心がなごむ。ここが終われば週末休み。久しぶりにまとまった休みがもらえるので、東京へ戻る予定にしている。何もなければね。



 午前の診察が終わろうとしているときに、僕の携帯が鳴る。もちろん電話番号は僕の勤務先。何か困ったことが起きたかなあと思いながら電話に出る。



「遠藤中隊長!緊急招集がかかりました!今すぐ部隊へお越しください!」



と、幹部付准尉が慌てた声で話す。いつも温和な准尉が慌てた声を出すなんて尋常じゃない。僕は小児科部長に連絡する。もちろんこういうことがあり得るので了承を得て、診察室をあとにする。



「遠藤先生!災害派遣ですか?!」

「そのようです。緊急招集です。」



と外来の看護師と話し、着替えるために更衣室へ。途中にある待合室のテレビには速報が入っている。速報は日本じゃない。海外だ。南太平洋の島。フランス語圏内の日本人も訪れる観光の島だ。もしかして招集はこれか?と思いながら、急いで着替え駐屯地へ向かう。私服だったけど、着替えている暇はない。そのままの格好で、IDを門衛へ見せると、僕は佐官なので、いつものように警衛担当衛生隊員は大きな掛け声と敬礼。衛生隊の建物内で迷彩作業服へ着替え、部隊へ向かう。呼び出しから約30分。ちょっと時間がかかったかもしれないね。



部隊へ着くと、もう僕の部下たちは整列していた。担当准尉から詳しく招集内容を聞く。まさしくテレビの速報で見た内容で、今すぐ派遣準備に取り掛かれという中央からの指令だった。ま、もういつでも命令が下ると派遣できる状態にある。色々装備類の確認を指示して、僕は准尉とともに急遽作られた海外災害派遣司令本部へ向かう。



 司令本部では様々な資料をもとに続々と中央からの派遣内容が送られてくる。第1陣としてフランス語が達者な僕と海外派遣経験者が多い僕の部隊が派遣されることが決定。在住邦人や旅行邦人の救助や安全確保、安否確認等の名目で輸送手段が確保でき次第、派遣ということになっている。もちろん現地の怪我人等の処置も行われる。現地からも最新鋭の装備を持った僕らへ要請が来ているらしい。



僕は医療チーム派遣隊長に僕が任じられた。演習で行った通り、各小隊長を集め派遣についての会議を行う。その会議の内容を各小隊長が小隊のものに伝えるということになっている。とりあえずあとは中央からの指示待ちという状態になり、一時休憩。各自家族などに連絡と報告をするように指示をした。もちろん僕も自宅と両親へ電話をかける。



「美里、海外派遣が急きょ決まって、いつ出発するかわからない。だから、あとのことを頼んでいい?」

「え・・・?お仕事だもの…仕方がないわね。いつまで?」

「最低ひと月かな?第1陣として行ってくる。」

「うん…。頑張ってね…春希さん。そっち自宅のほうに行って整理しておくね。だから安心して行ってきてね。」



と言って美里のほうから電話を切った。あと、派遣先の病院とかへも報告。休診依頼をしておいた。営外者は、各自数時間の一時帰宅が許され、最終の準備を整える。ささっと部屋を片付け、近所の隊長宅へ出向き、単身赴任なので自宅のことを色々頼んできた。そして机に挟んであった家族写真を取り出して家を出た。これは白馬で行った結婚式の時の写真。家族みんなが写っている。もちろん美里のおなかには新しい命が宿っているし…。これしかないと思って持ち出した写真なんだ…。