ミラー! (652)裏で行われていること・・・
ある日総監から呼び出された。もちろん総監に呼び出されることは珍しい。もしかしてこの前の演習評価が思わしくなかったのかな?
僕は、総監の部屋の前へ立ち制服を整えて、深呼吸。
「衛生隊遠藤3等陸佐、入ります。」
と声をかけ、ドアを開ける。大叔父さんが総監をしていたころはよくここへ来たものだけれども、その後はない。ほんと何言われるかドキドキしながら中へ入る。すると中には大叔父さんが総監と談笑していた。そういや総監は、大叔父さんの後輩というか同じ派閥的なところの一員だ。防大卒という学閥の中にもいろんな派閥があるわけで、そこの一つに大叔父さんがいた派閥があった。まあ、源家は代々そこの派閥らしいけど…まあ言う保守的な派閥だと思う。
「おお、来たか。遠藤君そこへ座りなさい。」
とにこやかに話す総監。お叱りではなさそうだ。
「先日の演習、よくやってくれた。各方面からの評価が高かったよ。君に任せてよかったと思っている。」
「はい、ありがとうございます。」
そういうと、総監は周りにいる部下たちを遠ざけた。この部屋にいるのは総監、大叔父さん、そして僕だけになった。すると空気が一変する。
「あの…。何か…?」
すると大叔父さんが重い口を開いた。
「春希君、そろそろ退官の準備をしたらどうかな?」
「え…?」
退官?今のところ続けようと思っているのに?そりゃ退官を考えたこともあるけど…。
「最近どんどん医官としての仕事を減らされていると感じないか?今回も医官らしいことはせずに司令側として動いていたよな?」
そういえばそう…。駐屯地内では医務室にいることは少ない。ほとんと部隊で雑用をしたり、幹部室で書き物をしたり…医官らしいことをあまりしていない。
すると大叔父さんはため息をついた。
「春希君は、指揮幕僚受験を考えているようだが、いくら受験をしてTOPの成績をとったとしても、100%合格はない。それどころかどんどん医官としての仕事を奪われるだろう。近いうち、民間派遣も打ち切られるかもしれない。あと、病院勤務の希望も、あるところの関与で握りつぶされているよ。幹部学校の件もそうだ。」
あるところ・・・?
「すぐに退官はしなくてもいいけれど、今の部隊での仕事が落ち着いたら…そうだな2,3年のうちに…。」
「あの…あるところって…?」
「ま、それは遠藤代議士が絡んでいるのだけれども…。と言って遠藤代議士が動いているではなく、その周りだよ。もう遠藤代議士は長く代議士をしすぎたし、そろそろ引退を…って声もある。といってもまだまだ若いのだけれどね。ということだ…。」
大叔父さんはそれ以上は言わなかったけれど、まあ言うこの僕がお父さんの跡を継ぐ時期が来たんじゃないか?ということだろう。
たぶん動いているのは弐條派。
もともと弐條血筋の僕を政治家として養成させたいのか?
いずれと思っていたことだけれど、こんなに早く話が来るとは思わなかった。まだまだお父さんは十分できると思っていたし…。兄の春斗は、来年行われる衆議院選挙に、弐條雅司代議士の後継者として出馬が決まっている。お祖母ちゃんもそのことでほんと若返ったように動いている。
もしかして…この僕を退官させようとしている中心人物って…お祖母ちゃんなんだろうか。お祖母ちゃんならあり得る。強引なところがあるし…。
まあいずれ考えないといけないことなんだろうけれど、そのタイミングがやってきたってことかな…?