ミラー! (646)複雑
披露宴の時間が近づく。僕は、制服に着替える。まずは制服。子供たちもきちんとしたセレモニーの衣装に身を包み、準備万端。未来は美里の待つ立原家の控室へ向かった。今回の招待客の大多数は美里側。僕の招待客は僕の身内と、富田君のご両親。あと、3月の神戸で行った披露宴へ来れなかった友人くらいで少ない。
富田君と陽菜の3歳になったミラーツインの女の子達が、その場をなごましている。かわいいふわふわの淡いブルーのドレスを着せてもらって、にこにこしながら二人ぺちゃくちゃしゃべっている。僕と春斗みたいな全く正反対なミラーツインじゃなく、見た目以外は全く同じ。ミラーツインだと気がつかないくらい。
「ほんとかわいいよね。双子ちゃん。あのドレスリュヌじゃないよね?」
と僕は富田君と話す。
「あ、あれは陽菜がパリで見つけてきたんです。日本にはないデザインでしょ?陽菜が一目惚れしちゃって…。」
日々パリで過ごしている双子ちゃんたち。3歳でもうバイリンガル。お友達がフランス人なので、時折フランス語で話している。
「そろそろ富田君?」
「はい?」
「そろそろ転属じゃない?あっち行ってもう少しで2年でしょ?」
「あ、そうですね…。できれば日本へ戻りたいなあと思っています。やはりあっちの生活は楽しいけれど、疲れますから…。子供たちも日本の幼稚園へ入れたほうがいいんじゃないかと、この前も陽菜と話していたところなんです。」
と、いろいろお互いの現状を話した。
もちろん僕は関東へ行きたいんだけどね…。でも今のところ受け入れてもらえない状態。やはり暇さえあればいろいろ考えてしまう。このままでいいのか…辞めるのか…それとも…?
時間。披露宴担当者が僕を呼びに来る。会場前にはたくさんの人。これは招待客だけじゃないな…。僕は、白手袋をはめ、写真室の前へ向かう。親族写真を撮るのだ。この時間を使って親族紹介も兼ねている。
「あ、遠藤!間にあった!!!」
と、小脇にある箱を抱えて走ってくる男性。その男性は招待客の一人で、僕の4年上の先輩に当たる人で松本駐屯地医官をしている。防医大の時に大変お世話になった人で、今回の披露宴へ呼んでいた。そして僕と同じ3佐なので、駄目もとで昨日、礼装階級章を頼んだのだ。
「すみません先輩。おかりします。急遽制服になったので…。もちろん責任もってお返ししますので。」
「ほんと驚いたよ。これ、つけたことないからなあ…ちょうどいいよ。遠藤に使ってもらったほうがいい。ちょうどお祝いの席だしね。」
といって箱を開け、富田君とともに肩へ礼装階級章を装着してくれた。これで違和感なく写真が撮れる。ちょうどその時に、美里の親戚ご一行がやってきた。