ミラー! (644)僕って有名人?
朝目覚めて朝食を摂ったあと、即担当者に連絡。まあ、なんとか…はじめに着ることで可能となる。デザイン的にそのほうがいいからね。僕が着るのはお色直しのあとのドレスに合っている。午前中は記念撮影が入っているから、美里は早々美容室へ行った。ま、男の僕は着替えるだけでいいからね。もちろん大切な制服がなくなってはいけないから、記念撮影中は、披露宴へ出席する富田君に管理を任せた。ちょうど富田君は夏季休暇中に実家へ里帰り。陽菜も双子ちゃん達を連れて白馬へ来ている。
「ほんと披露宴3回もなんて…大変ですね。遠藤3佐。」
「んん・・・2回のつもりだったけど、美里の親戚はご高齢が多いからね。あとこっちの友人も呼びたいって言うし…。ま、東京で政界関係の披露宴がなかっただけでもましだよ。」
という僕に笑う富田君。妻を亡くした後すぐの再婚だからね…。初婚なら3回していたかもしれないけれど、控えさせてもらった。
「あ、なんか13隊の山岳部隊が訓練で来ているみたいですよ。訓練というより自主特訓かも…。中に同期がいたので…。」
「へえ…。最強の山岳部隊でしょ?もしかしてここ使っているわけ?」
「そうみたいです…。ロビーでばったり同期と会ってしまって…。今2曹の奴なんですけど、同じ長野出身ですので…驚きました。」
昨日もなんとなーくそれっぽい集団がいたんだよね。迷彩とかじゃなかったけど…。なんていうのか同業者の勘…。夏季休暇を使って合宿かな?
制服へ着替えを済ませ、腕時計を見ると養父母と父さんが到着する時間。迎えに行く約束をしていたから、富田君とともにロビーへ。父さんたちも今日一泊することになっているから、チェックインとかもしないとね。秘書もいるけど、今日はあくまでもプライベート。制服でウロウロするのもちょっと…。案の定時間通りに到着した様子の親たち。秘書が運転する黒塗りに車に駆け寄って、秘書がドアを開けるのを待つ。秘書がドアを開けお母さんから出てきた。
「あれ?春希。どうして制服なの?」
と不思議そうに声をかけるお母さん。もちろんお父さんも、父さんも同じことを言う。
「春希、もしかして俺が準備した衣装着ないつもりじゃないだろうね。」
と実父。もちろん着るに決まっているから、事情を説明した。ベルボーイに荷物を任せて、僕はお父さんたちとともにチェックインカウンターへ。まだチェックインの時間じゃないけれど、ホテル側は事情を知っているので、チェックインできた。
チェックインを済ませてすぐに、ロビーがざわつく。着替えを済ませた美里の登場。ロビーにある綺麗な階段踊り場での記念撮影があるからね。
「春希、早く美里さんのところへ行ってあげなさい。」
とお父さんが促す。僕は美里のところへ駆け寄る。とてもきれいな美里。やはり幸せそうな表情は3月の時よりも最高に綺麗だった。付添い人とカメラマンに促されて、定位置につく。お父さんたちや一般客に見つけられて照れながら、記念撮影開始。角度やポーズを変えて何枚も。撮影が終わると、美里は着替えに…。もちろん僕も…。でも美里に比べたら時間もかからないから、お父さんたちのところへ向かう。
「遠藤3佐。」
と、富田君が声をかけた。富田君の横にはトレーニングウエアを着た集団。嗚呼いかにも自衛官という感じの人たち。
「遠藤3佐。こいつがさっき言ってた俺の同期で斎藤です。斎藤、こちらは俺の元上官で、義理の兄の遠藤3佐。医官なんだ。」
斎藤という男が僕に対して敬礼をすると、斎藤という男の部下たちはそれに合わせて敬礼。
「お目にかかれて光栄です。噂は長野まで届いています。」
「ああ…そうですか…。噂って…。」
「奥様のこともですが、医官としての腕前のことも色々と…。」
「3佐の階級だけど、まだまだですよ。この僕は…。」
「いえいえ…。ご立派な経歴です。」
などと話しているうちに僕の着替える時間がやってきた。そこまで僕って有名なんだろうか…。ま、美里の旦那としてテレビも出たしなあ…。ほとんどそれじゃないかと思う。