ミラー! (642)忙しい夏季休暇 | 超自己満足的自己表現

ミラー! (642)忙しい夏季休暇

 納涼祭が終わり、夏季休暇に入る。荷物をまとめて東京へ戻らずに、美里の故郷、長野の白馬へ。白馬のリゾートホテルで行われる、地元親戚縁者向けの披露宴。いろんな都合で神戸へ来てもらえなかった美里のおばあちゃんや親せきの人たちのためにごく身内で行う。忙しいお父さん、お母さんと父さんも出席。今回の衣装は父さんが準備してくれたリュヌ。リュヌらしいデザイン。


 前日の打ち合わせでは、美里はほんと楽しそうに担当者と話していた。特に最近とても幸せそうな表情をする美里。秋には引退が一応決まっている。いまだに引退を惜しむ声が高い。僕だってできるだけ仕事をしてほしいけれど、子供たちの世話とか家事とかをしないといけないからと言ってきかない美里。僕と子供たちのために尽くしたいと結婚前から言ってたんだよね。仕事を辞めて誰かのために精一杯尽くしたいと…。



別に美里が働かなくても、食べていける。僕の給料よりも、亡きお爺ちゃんの遺産関係の不動産収入が多いし…。それだけでも食べていけるんだけどね…。でもいつ何時どうなるか分からないから、当てにしてない。ま、子供の教育費にはお金かけているけどね…。いい環境で勉強させたいし…。教育費はちょっと今の給料では賄えないけど…。ま、それはいいとして…。


 打ち合わせを終え、別室に明日の準備を終えた子供たちを寝かせ、やっと二人の時間。大きなクイーンサイズのベッドで二人で寄り添う。


「美里。」
「何?」
「最近、とてもいい顔してるね。」
「どんな?」
「とても幸せそうな…。充実しているっていうか…。」
「あははは…。私は春希さんと付き合いだしてからずっと幸せよ。この上なく…。単身赴任でさみしいけれど、毎日電話してくれるし、最低月に一回は戻ってきてくれるし…。ちゃんと私だけを愛してくれている。もちろん子どもたちもだけど…。」
「んん…単身赴任じゃなければもっといいね。一緒に住めるといいよね。本来なら、僕のところへ呼び寄せたいんだけど、優希や美紅、未来の学校とかのことがあるでしょ?できるだけ転校ってさせたくないんだよね。それでなくても転勤が多いんだし。ま、僕の場合は方面隊内で助かっているけど…。次はどこへ行くかわからないしね。九州か、北海道か…東北か…。病院があるところの率が高いね。それか総監部…。ほんとにそれだけ?何か隠してない?」


すると美里は僕の胸に顔をうずめる。


「どうしたの?何か隠してるの?隠し事話だって約束したよね。それが単身赴任夫婦の円満の秘訣だよね?」


美里は僕の顔をじっと見つめて微笑む。


「あのね…まだ確定じゃないんだけど…。赤ちゃんできたかも。」
「え??」
「あれ遅れてるの。私、あれ遅れないし…。夏休みに入って一緒にいること増えたでしょ?キチンと夫婦生活もあったし…。」


ほんとまだ検査薬もしてない状態らしくて、女の勘だという。だから最近なんか幸せオーラだったのか?


「確か、未来の時に通院していた産婦人科があったでしょ?東京へ転院する前の…。」
「うん…。」
「明後日でも一緒に行こうか。いくら医者でも僕は専門じゃないし機器もない。ね?」


美里は大きく頷く。そしてお互いギュッと抱き締めた。