ミラー! (630)出世の道具?
盛大なセレモニーが終わった。陸海空の源3兄弟が揃っての花束贈呈なんて、ほんと涙が出てきたよ。自衛隊内では有名な3兄弟。特にお兄さんはあのブルーインパルスの次期隊長。マニアの間では超有名人。追っかけがいるくらいだから。
会食の時も、源家の周りにはたくさんの人たちが集まってきた。雅美のおめでたに満面の笑みでこたえる大叔父さん。弐條家に借りを返したと言っていた。昔、お爺ちゃんと大叔父さんは異母兄弟で仲があまり良くなかったらしい。どれくらいかは分からないけれど、雅美が弐條家と源家の橋渡しをしたといっても過言じゃないだろうね。本当に最後は仲直りをしてお爺ちゃんはこの世を去ったわけなんだ。
ああ僕は関係ないなあ…なんて思いながらケーキを食べていると、やはり陸海空の高級幹部と言われる人たちが、この僕を取り囲む。そしてお父さんのご機嫌伺いとか、いろいろ話しかけてきた。ここのところこういう感じが続いている。なんかおかしい…。
「遠藤3佐は、医官のままでいるのかね?」
「え…まだ決めかねています。今の任務が落ち着かないと…。」
「将来は政界へ行くのだろ?」
「まあ…その為に弐條家から遠藤家へ養子に行ったのですから…。弐條のままでしたら、医官を続けていると思いますけれど、いずれ…。」
「まあ、その時は色々頼みますよ。未来の防衛大臣、いや総理大臣候補だしね。遠藤君。」
といい、ぽんぽんと僕の肩を叩いていく。うむむむ・・・。するとお兄さんがやってきて、会場の隅へ呼ばれる。
「ほんま、あの連中は出世心見え見えやん。たいして幹部学校の成績良くなかった奴らばっか…。将官になったら政界にコネがいるとか戯けたこと言ってるし…。あほちゃうか。」
「そんなものでしょうか…?」
「ああ。さっきも色々奴らに嫌み言われてな。雅美が弐條の跡継ぎ産んだら、俺は将官間違いないだろ?ってさ。そんなんわからんやん。親父がここまでなれたのも、源家がお兄さんを弐條へ婿養子にいれたとか、義姉が元総理大臣だとか…。統幕長になったのも元総理である春希君の養父が甥っ子だからとか…みんな好き勝手なこと言ってさ…。俺は絶対実力で将官になってやる。高級幹部課程も絶対トップで出たる。そう思うわけ。親父もそうやった。防大からずっとトップ。親父だけやない、祖父も曾祖父も。源の人間はそうじゃないとあかん。そう言い聞かせてここまでやってきた。だから、春希君。君も変なうわさに惑わされんように頑張れよ。」
「ええ…そうですね…。」
と言葉を返した。お兄さんの話で、ここ最近の出来事が理解できた。出世のためのコネを作ろうとしているんだろうね…。いつになるか分からないのにさ…。