ミラー! (628)準備
朝食を済ませ、少しの間だけどくつろぐと、各自準備。昨日のうちにかけておいた制服一式に袖を通す。
みんな礼装。陸空幹部である僕とお兄さんは常装制服の夏服に礼装階級章をつける。それに白手袋ね。海である弟さんは、夏礼装に白手袋。ぎりぎりまで着替えているのを眺めている春斗。春斗はブラックスーツでいいからね。元自衛官、今は民間人。
身なりが整いつつあるころ、隣に住む、養父母が入ってきた。養父は招待を受けている。統幕長はお父さんにとって叔父さんに当たる。そしてお父さんは元防衛大臣。二人の間柄が世間に知れ渡ってから本当に家族ぐるみで付き合っている。といって、仕事に関して何かしたってことはないけどね。あくまでもプライベートのみの関係。
「準備できたか?春斗君、うちのもう1台の車使ったらいいよ。春希の車じゃ小さいだろ?」
と言ってお父さんのプライベートで使っているレクサスのカギを渡した。お父さんは秘書が運転する公務用の車で行くらしい。春斗が運転手をするのだ。
お母さんが僕たちの身なりの最終確認をしてくれている。これでも元総理大臣夫人。お母さんは美里にも政治家の服装についてもいろいろ身なりを整えながら話している。僕が政治家になったら、美里はその夫人としていろいろ縁の下の力持ち状態で頑張らないといけないしね…。徐々にだけど、政治家妻の教育をしているみたいだ。
時間が来て、ドアフォンが鳴り、お父さんの秘書が迎えに来たらしい。
「じゃ、行ってらっしゃい。孝志さん。私はここで美里さんと、子供たちの面倒をみているから…。春希、叔父さまによろしくお伝えしてね。私にとっても母の弟にあたる人ですからね。本来であれば、母の名代で行きたかったけれど、子供たちのこともあるし…。あ、車の入門証忘れたらだめよ。」
「あ、そうだった。お父さんの車借りるなら入れ替えておかないと…。」
と、僕はガレージに停めてある僕の車からこの日の為に配布された入門証を取りに行き、春斗に渡した。
「じゃあ行ってくるね。美里、子供たちのこと頼んだよ。優希、未来、美紅、玲奈ちゃんの事よろしくね。」
と僕は手を振り、家を出た。