ミラー! (625)源一族勢ぞろい
6月末。統合幕僚長が定年退官する。退官のセレモニーに親戚だからか知らないけれど、ご招待を受けてしまった。出張扱いで、東京へ戻る。もちろん、春斗と雅美夫婦や、お兄さん、弟さんも招待されている。春斗たちは玲奈ちゃんもつれて、うちへお泊りにやってきた。ま、大きい家だから支障はない。
退官セレモニーの前日に我が家で宴会。この時はお兄さんも来てもらった。お兄さんの家は奥さんが赤ちゃんを産んだところだから、お兄さんだけ。お兄さん待望の長男誕生。名前を義治と名づけて、胸元にはきちんと長女の美沙ちゃんと一緒に写っている写真を入れている。それを見せてもらって盛り上がる。
玲奈ちゃんとうちの子供たちで、仲良く遊んでくれて助かる。特に玲奈ちゃんと未来は仲がいい。一緒に座って本を読んでいる。我が家にはピアノがないから、玲奈ちゃんはぐずるかなあと思っていたけど、未来がいるからおとなしい。セレモニーの間、美里が玲奈ちゃんの面倒を見てくれるからどうなるかと思ったんだけど、なんとかなりそうだ。もしピアノと言い出したら隣の遠藤家へ連れて行って存分に弾かせたらいいんだけど…。
それぞれの近況報告をする。僕はまあ現状維持だから変わり映えしないけれど、雅美のお兄さんが春から以前いたブルーインパルスへ異例の復帰となったので、その話で盛り上がる。
飛行隊長付編隊長という肩書で現在TR中。以前、広報幹部で5番機のパイロットだから、1番機担当になってもまあ大丈夫。TR訓練も難なくこなし順調であるとのこと。さすが空自いちのパイロット。ブルーのあと飛行機から降りるなんて信じられないくらいだ。ま、ここへ転属になったので、1佐昇任が少し遅れるらしいけれど…。
「もうここまでさせてもらったら思い残すことはないしね。若いパイロットを育てるのが俺の役目になると思うよ。」
と笑っている。防大から幹部学校指揮幕僚課程までストレートでトップを誇ってきたお兄さん。将来の幕僚長と言われているだけのことはある。あとは運だけ。運がなければいくら優秀でも幕僚長にはなれない。あといろいろコネとか…。コネねえ…。
そういや最近高級幹部たちがこの僕に対して愛想がいい。僕の養父は政治家だし、元防衛大臣。出世のためには政界のコネも絡んでくると噂で聞いたことがあるからね。
そういや源家の人たちがみんな出世しているのも、源の人間だった大ばあちゃんが弐條家へ嫁いだからだとか色々噂がある。ま、それだけじゃないんだろうけど…。
「遠藤君、もし仙台病院へ来る機会があったら、ぜひ松島基地へ遊びに来てよ。運が良ければ乗せてやるから。」
と朗らかに笑うお兄さん。そうだな…。仙台へ行くこともあるだろうね。その時はぜひ遊びに行こうと思う。なんだか楽しみ。