ミラー! (623)取材
職場へ帰ってきた途端、取材が入る。僕の若い部下たちは大喜び。テレビに出れるってことでね…。僕は朝から憂鬱なのに…。
朝早く出勤して幹部食堂で朝食。他の幹部たちも色々この僕をつついてくるわけ。ささっと食事を済ませて、衛生隊幹部室へ。取材は昼過ぎからだから、それまでに仕事を済ませないといけない。たくさんの書類に目を通し、ハンコを押したり書き込んだり。気がつくとあっという間に昼休み。ああやだやだと思いながら、席を立つ。お昼はいつものように食堂。何となく食欲がない。またいじってくる幹部たち。
「ほんと奥さんが有名人って大変だね。顔出さないといけないからさあ…。その点俺ら一般嫁は楽でいいわあ。」
「遠藤君の場合は、家も特殊だしね。実父は有名ブランドオーナー。養父は超有名政治家。その上、嫁さんは有名女優?私生活も大変だね。」
自衛隊医官に向いてないんじゃないの?とまで言われる。
本来ならそろそろ養父の跡を継ぐために修行に入らないといけないんだろうけれど…。先日もそのことで話した。養父はまだまだ大丈夫だからと苦笑していたけれど、養母がこっそり教えてくれた。やはり気になるらしい。このまま養父の代で終わらせてもいいかもしれないけれど、それじゃ代々の政治家一家が…と思ったり…。最近うるさい優希や美紅の祖父である東京後援会会長…。何のために亡くなった娘を遠藤に嫁がせたか、そして前田家の血を受け継ぐ子供たちがいるのか…。などと会合のたびに言われるらしい。わかっている。それは遠藤家の血が一切入っていないこの僕が、遠藤家の地盤でやっていくため。地元良家である前田家と組めば…と思うからで…。これでも僕は政治一家弐條の血を受け継いでいる。
はあ…また変なことを考えてしまったな…。今は医官としての仕事が精いっぱいなのに…。
取材関係者が現れて、打ち合わせの後、撮影へ入る。外で部下たちと撮った後、常装制服に着替えて屋内でいろいろインタビューを受けるわけ。出会いからほんと日々のことまで。なんだかんだいって、僕は単身赴任。朝の電話と寝る前の電話が夫婦のコミュニケーション。週に一度、妻からの宅配便。それも楽しみ。ま、言える程度のおのろけを言わされた。どれくらいカットされるんだろうかと思いながら、取材関係者を見送り、仕事へ戻る。