ミラー! (621)忙しい妻
引退前の妻、美里の仕事はとても忙しい。連休中は僕が子供の面倒を見て、彼女は仕事。引っ張りだこの彼女。ほとんどがトーク番組だ。
お昼の生放送に、お昼の対談番組の録画。連休明けもなんかあるみたい。結婚した後だし、もう秋には引退しちゃうからね。今のうちにいろいろ仕事をこなすんだろう。やはり引退を惜しむ声がたくさんあって、事務所のほうからもこの僕へ考え直してほしいといわれる。しかし、家事育児が最優先だからと断る。もちろん美里もそう言って断っている。
「美里、仕事続けたい?」
「え?んん・・・でも家事と育児中心にする約束よ。それがあなたと結婚すると決めた時の約束だもの。」
「まあ、それが結婚の条件だったけれど…。ずっと考えていたんだけど、何か家でできる仕事とかないかな?子供が学校へ行っている時間だけとか。仕事をしている美里って輝いていていいと思うんだけど…。」
美里は黙って布団をかぶる。
「美里は静かに家に籠っているってタイプじゃないでしょ?専業主婦って柄じゃないよね?僕としては育児と家事がちゃんとできていれば、仕事続けてもいいと思うんだ。ただし、美里が無理しなければね…。これから子供たちは大きくなって手がかからなくなるし、今は家にいてももうちょっとしたら外へ出てもいいよ。ね?美里。」
と僕は思っていることを吐き出す。
完全引退じゃなくてもいいじゃん。カリスマ主婦とかそういう元女優とかいるじゃん。今までシングルマザーできちんと仕事と育児をこなした美里。僕が単身赴任でなくなれば…仕事を再開してもいいんじゃないかな。できる限り自宅から通勤できるところを希望しよう。病院か市谷?学校もあるし、方面隊付でもいいかも。とにかく関東を希望しよう。異動したばかりだから再来年だろうけどね。それか…やめてお父さんの秘書にでもなって修行する?大学病院か総合病院へ再就職?色々道はあると思うし…。もうちょっと考えてみようと思う。