ミラー! (615)妻の異変
長男優希が新学期を迎え、小学5年生になった。朝早くから制服へ着替え、ランドセルを背負い、定期券の入ったパスケースを握りしめて家を出た。
幼稚園も今日から始まる。未来は転入だから、夫婦そろって早めに行っておかないとね。
朝からちょっと体調が悪そうな美里。でもきちんとこの僕の為にスーツをコーデイネイトしてくれた。ネクタイの色と美里のワンピースをおしゃれに合わせている。
「大丈夫?美里。なんか顔色悪いけど…。僕は君の夫だし、医者だから隠さないでよ。」
「うん、大丈夫。緊張かな?ちょっとおなかが痛いの。大丈夫よこれくらい。どうってことないから。」
と、顔色が悪いけれど微笑む美里。未来も心配そうに美里の手を握っている。
幼稚園へ到着。未来と美紅のクラスは離れてしまったけれど、嬉しそうに教室へはいっていく二人。それを見届け、園長先生へあいさつ。未来の書類と診断書を手渡し、いろいろ話をする。
見た目はわからないんだけど、やはり美里の調子がおもわしくない。時折下腹部を気にしている様子。早めに話を切り上げ、近くにある実父の会社駐車場に停めた車へ乗り込む。
「本当に大丈夫?」
「大丈夫よ。家へ帰って横になったら大丈夫だと思うから。」
「じゃあ、幼稚園へのお迎えはこの僕が行くから、ゆっくり休んでいたらいいよ。」
「ありがとう春希さん…。」
と言って助手席でため息をつく。
本当に心配。なんか尋常でないように思える。自宅には医療関係のものは聴診器とかそういうたぐいのもにしかないけど、少しなら診てやれるかな?病院へ行くべきか休めば治るかぐらい判断できるよね?これでも僕は医者なんだから。