ミラー! (605)診察 | 超自己満足的自己表現

ミラー! (605)診察

 さて、今日は未来が僕の診察へやってくる。未来は今月いっぱいこちらへいるので、主治医の代理。心臓外来で最後の順番になっている。朝から未来はとても楽しみにしているみたいで、にこやかに朝ご飯を食べていた。


「ねえ、春希さん。優希君と美紅ちゃん、ここには置いておけないから、連れていくことになるけどいいかな?」
「え?まあ…予約外来だから、変な病気うつらないと思うけど…。優希なら美紅の面倒見ることができるし、待合室で待たせておいたらいいよ。」


もちろん、優希と美紅は喜ぶわけ。なかなかこの僕が仕事をしている姿は見ることができないしね。


 午前の診察を済ませ、午後の診察時間まで時間をつぶす。未来は今回診察前に、心電図と超音波を検査室で受けてから僕のところへやってくることになっている。ま、この僕が前もって予約を入れておいたからね。幼稚園へ最新の診断書を提出しないといけないしねえ。この僕が書かないといけないことになるなんて思わなかったけど…。



心臓疾患のある患者さんたちの診察を済ませ、お次は未来の番。届けられた心電図の結果と超音波の画像を見ながら診断する。ほんと生まれた時に比べたら、ずいぶんとよくなった。ま、一緒に住んでいるし、見た目でもわかるんだけどね。


「遠藤さん、遠藤未来君、2診へどうぞ。」


と、未来を呼ぶ。いつものように未来はにこにこしながら診察室へ。


「よろしくお願いします!」


と丁寧にお辞儀。変な感じ。親子なのに。普通ならここで、様子はどうですか?ってお母さんに聞くんだけど、聞かなくても分かっている。だから検査の結果を報告する。


「未来君はずいぶん良くなっていますね。1年前とは大違いです。このままでしたら、1年生になることには通院しなくていいかもしれないですよ。ほぼほかの子供と同じ状態です。そのように診断書に書いておきますね。」


と一方的に話す。すると診察室の外で鳴き声。美紅の声だ。


「未来君だけずるい!美紅もパパに会いたいの!」


と、駄々をこねているみたいだ。ここまで来ると、優希でも相手にできない。僕はため息。今席を離れることはできないし…。


「美里、美紅を連れてきてもいいよ。診断書に入力したらもう診察は終わるから。」


美里は頷き、診察室を出る。僕はパソコンで診断書を作成し、プリントアウト。そしてサインと印鑑を押す。その間にやってきた僕の子供たち。困り果てた顔の優希と泣き顔の美紅。封筒に診断書を入れ、封をした後、僕は美紅に声をかける。


「どうしたの?美紅。もうすぐで年長さんになるんだろ?未来よりもお姉ちゃんなんだから、いつまでもメソメソはおかしいな…。」
「だって美紅。パパが好きなんだもん。未来君だけずるい…。」


僕は美紅の頭をなでる。


「美紅。未来はね、今日は診察なの。パパは仕事中だし…。おとなしく待つ約束だろ?もうお仕事終わるからね?」
「うん…。」


そういうと、子供たちと美里は診察室を出た。


 雑用を済ませ、診察室を出ると、美里と子供たちが待っていた。


「え?もう帰ったんじゃないの?会計済ませた?」
「んん…会計は済ませたんだけど、子供たちがパパと帰るっていうから…。」
「一緒に帰るって…。パパは自転車だし…。」


一緒に帰ることができないのは確かな話。しょうがないから、玄関前まで見送ることにした。右手は美紅。左手は未来。そして後ろに歩く優希。愛する家族に囲まれながら、玄関前まで。玄関横にはコンビニがある。いい子にしていたご褒美に、子供たち全員何かを買ってやることにした。にこにこしながらお菓子を吟味する子供たち。その姿を美里と見つめていた。


ほんとなんか幸せ…。家族水入らずって感じだよね。こういう時間を大切にしていきたい。